税金滞納者の死亡~両親の未納分は子供に支払い義務あり?~
両親などの家族が亡くなり、その家族が「税金を滞納していた」とわかることがあります。このような場面で、下のような点を不安に思う人は多いでしょう。
- その税金は家族が支払わなければいけないのか
- 支払いを逃れることはできないのか
- 親が差押予告を受けていた場合、予定通り実行されるのか
この記事では、これらの疑問への答えも含め「税金滞納者が死亡した場合」のルールや注意点などを解説していきます。「親が税金を滞納したまま亡くなってしまった」という方などには、特に参考にしていただけるでしょう。
- 税金滞納者が死亡した場合、誰が払う?
- 相続人が払う(家族など)
- 相続放棄をすれば払わなくていい
- 所得税・住民税・固定資産税などいずれも同じ
- 時効は関係ない
- 滞納者が死亡したら、差し押さえはなくなる?回避可能?
- なくならない(差し押さえされる)
- 相続放棄をすれば、そもそも不動産・自動車などを継がない
- 相続放棄したのに税金を払ってしまった!還付請求はできる?
- 取り戻せる(錯誤による他人の債務の弁済)
- 「民法707条」に規定
- 返還されないケースはある?
- 相続放棄していない「他の相続人」に請求することもできる
- 未納の税金がある場合、生命保険の死亡保険金は受け取れない?
- 受け取れるが「相続をした」と見なされる
- 相続放棄をできないため、税金の支払義務が生じる
- 単純承認・限定承認のいずれかを選ぶ
- 税金の支払義務を背負わないために!相続放棄の3つの注意点
- 遺品整理をしてはいけない
- 形見の品を売ってはいけない
- 自力で遺品整理をせず、業者に相談する
- まとめ
税金滞納者が死亡した場合、誰が払う?
まず気になるのは「親などが税金を滞納していた場合、誰がそれを支払うのか」ということでしょう。これに関するポイントをまとめていきます。
相続人が払う(家族など)
税金を滞納していた人が死亡したら、その人の相続人が支払うことになります。大抵は子どもや配偶者などの家族です。
相続放棄をすれば払わなくていい
しかし「相続放棄」をすれば支払い義務はありません。相続放棄をすると「他の遺産も相続できなくなる」のですが、おそらく他の遺産はあまりないでしょう(税金を滞納しているほどなので)。
そのため、税金の滞納額が大きければ相続放棄がベストの選択肢、というパターンが多くなります。
所得税・住民税・固定資産税などいずれも同じ
税金の種類についても「すべて相続放棄できる」というルールになっています。
- 所得税
- 住民税
- 固定資産税
- 自動車税
- 消費税(事業者だった場合)
上記のようにさまざまな税金がありますが、いずれも「相続放棄をすれば、支払義務なし」となります。
法人のみ別
注意点は、法人として税金を滞納していた場合、法人が死んでいない(清算されていない)以上、支払義務が残っているということです。個人事業主については、税金の支払義務は「事業主個人」と紐付けられているため、その個人が亡くなったら誰にも支払義務がありません(相続放棄をすれば)。
時効は関係ない
ここまで書いた通り、滞納者が死亡したケースでは「相続放棄をすれば完全に払わなくていい」ため、時効があってもなくても関係ありません。その上で補足しておくと、税金の時効は「事実上ない」ものです。
一応ありますが「途中で国が督促などをすれば時効がリセットされる」のです。また、時効が来る前にそもそも差し押さえがあります。
そのため、税金滞納の時効を気にしている方は「時効はない」と理解してください。
滞納者が死亡したら、差し押さえはなくなる?回避可能?
親や祖父母などが生きているうちに差し押さえが決まっていた場合「死亡によって差押が消滅するのか」という点も気になるでしょう。ここではそのルールを解説します。
なくならない(差し押さえされる)
結論をいうと、滞納者が死亡していても差し押さえはなくなりません。予定通り実行されます。
滞納者の子どもなど財産を相続した人は、その差し押さえを回避するために税金を完納しなくてはいけません。
相続放棄をすれば、そもそも不動産・自動車などを継がない
このルールについては「相続放棄をすれば関係ない」といえます。相続放棄をしたら、不動産や自動車などの遺産も手放すことになるためです。
そのため、相続放棄すると決めた人にとっては関係がありません。
相続放棄したのに税金を払ってしまった!還付請求はできる?
相続放棄をしていたのに、間違って税金を払ってしまったというケースもあるでしょう。「税金だけは払わなければいけないと思っていた」という理由が多いものです。
ここでは、そのようなケースで国や自治体から税金を還付してもらえるのかを説明します。
取り戻せる(錯誤による他人の債務の弁済)
結論をいうと、これは取り戻すことが可能です。法的には「錯誤による他人の債務の弁済」に該当するためです。
もっと簡単な言葉でいうと「間違いによる他人の借金の返済」に当たるためです。
「民法707条」に規定
このルールは、民法第707条の1項と2項に規定されています。
第707条
1.債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合において、債権者が善意で証書を滅失させ若しくは損傷し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、その弁済をした者は、返還の請求をすることができない。
2.前項の規定は、弁済をした者から債務者に対する求償権の行使を妨げない。
Wikibooks「民法第707条」
重要なのは2項で、ここに「返してもらえる」という内容が書かれています。言葉の意味を説明すると下の通りです。
- 弁済した者(支払った人。ここでは故人の子どもなど)
- 債務者に対する求償権(支払った人に対する償いを求める権利)
つまり、2項に書かれているのは「支払った人が、自分に対する償いを求める権利」を認めるということです。ここでいう償いとは、払ってしまった税金を返してもらうことです。それを「妨げない」=「権利が認められる」と書かれています。
返還されないケースはある?
これはありますが、税金の場合はあまりありません。返還されないのは、先程の条文の1項に書かれている、下のようなケースです。
- 債権者(請求する側)が
- 証書を滅失させた場合は
- 支払った人は、返還請求をできない
つまり、支払った後で「証書を破棄されてしまったら」、もう返してもらうことはできないということです。この点では債権者(請求する側)に有利といえます。
なぜ請求する側に有利なのか
これは、「もらったお金を後で返せといわれると困る」ためです。支払義務がなかったとしても、それは「事前に支払う側が気づくべきだった」ともいえます。
そのため、実際に支払いが完了し、証書まで破棄された場合は「もう返還しなくていい」というルールになっています。そうならないためにも、支払いの前に「本当に支払義務があるのか」を確認することが必要です。
税金で書類が廃棄されることはない
当然ながら、税金については請求する側(国・自治体)が、書類を破棄することがありません。そのため、気づいたらいつでも返還請求をできます。そして、特殊なケースを除けば、それは認められるものです。
このため、税金の場合は「返還されないケースはめったにない」と考えて下さい。
相続放棄していない「他の相続人」に請求することもできる
これは、一般的には「あまり取りたくない」手段でしょう。
- 国から還付されなかった
- しかし、相続人の全員が相続放棄をしたわけではない
- 相続人の中に「相続放棄しなかった人」がいる
このようなケースであれば、その「相続放棄をしなかった相続人」に対して、税金の支払いを要求できます。あなたが支払った後でも「後から請求」できるのです。
これは、相続をした以上当然だといえます。相続をしたら財産だけではなく借金も引き継ぐものです。同じ相続人という立場の中でも、相続放棄した人としていない人がいたら、していない人の方が税金の支払義務を負います。もちろん、税金だけでなく民間の借金などがあった場合でも同じです。
(生前整理・家財整理については、下の記事を参考にしていただけたらと思います)
未納の税金がある場合、生命保険の死亡保険金は受け取れない?
親や配偶者が亡くなったとき、生命保険の死亡保険金を受け取れることはしばしばあります。しかし、税金の未納がある場合、これを受け取れるのかが気になるでしょう。ここでは、そのルールを解説していきます。
受け取れるが「相続をした」と見なされる
死亡者に税金の未納があってもなくても、生命保険の死亡保険金は受け取れます。ただし、保険金は「遺産」の一種であり、これを受け取ると「相続をした」と見なされます。
相続放棄をできないため、税金の支払義務が生じる
相続したということは「相続放棄をできない」ということで、未納の税金についても支払義務が生じます。もともと相続放棄が特殊なケースなので、「通常どおりの相続になる」といえるでしょう。
最終的には「比較の問題」となります。滞納分の税額より保険金の方が多ければ、受け取るのが得策です。
単純承認・限定承認のいずれかを選ぶ
相続には、下の3つの選択肢があります。
単純承認 | すべて相続する |
---|---|
限定承認 | 借金・税金滞納の分を支払える分だけ相続する(プラマイゼロになる) |
相続放棄 | プラス・マイナス、どちらの財産も一切相続しない(関わらない) |
ここで書いている「死亡保険金の方が金額が多い場合」は、1つ目の単純承認を選びます。「すべて相続する」ことがプラスになるとわかっているためです。
限定承認を選ぶべきケース
一方、借金や滞納がどれだけあるかわからず「全部承認するとマイナスになるかもしれない」というケースもあります。この場合は限定承認を選びます。限定承認だと、死亡保険金を全額受け取れるとは限りません。滞納税額を含め「負債を払うのに必要な金額のみ」となります。
(代わりに、後から借金があることがわかっても、それを支払う必要はありません。期限内にその貸し手が名乗り出なければ)
なお、故人の保険手続きについては下の記事で詳しく解説しているので、こちらも参考にしていただけたらと思います。
税金の支払義務を背負わないために!相続放棄の3つの注意点
故人に税金の滞納があった場合、何よりも「相続放棄を確実にする」ことが重要。そして、そのために「やってはならないこと」があります。ここではその点も含め、相続放棄をするときの注意点を解説していきます。
遺品整理をしてはいけない
まず、相続放棄の基本となるのが「遺品整理をしない」ことです。遺品整理をした時点で「相続をした」とみなされるケースが多いためです。
「ただの掃除」でも、それが「価値のある遺品の隠蔽」とみなされるリスクもゼロではありません。確実に相続放棄をしたいのであれば「まずは遺品整理をしない」のが鉄則なのです。
このような相続放棄のルールについては、下の記事を参考にしていただけたらと思います。
形見の品を売ってはいけない
これも遺品整理と似ていますが、形見の品を売ることも「相続をした」とみなされます。少なくとも、子どもや兄弟姉妹などの法定相続人であれば、そのリスクは極めて高いと思ってください。
友人が小さな形見の品をもらい、それを売却した程度であれば、基本的に「相続した」とは見なされません。ただ、この場合も儀式として形見分けをしっかり行った場合は、相続人たちは「相続をした」と見なされる可能性が高くなります。
このような形見分けのルールに関しては、下の記事で詳しく解説しています。
また、形見の品を売るときの税金のルールについては下の記事を参考にしていただけたらと思います。
【参考】遺品を売ると税金がかかる?課税の条件・注意点・節税のポイントをプロが解説!
自力で遺品整理をせず、業者に相談する
相続放棄をするときの遺品整理は、何もかもNGというわけではありません。近所に迷惑をかけないための清掃など、最低限のことは許されます。このような線引きは、プロに依頼することでもっとも明確にわかるものです。
明確にわかるだけでなく、専門業者という「第三者」が介入したことで、税務署から疑われるリスクも低くなります。もちろん、その業者との個人的な人間関係の有無なども問われるでしょう。しかし、意図的に何かを隠蔽しようとしたのでなければ、こうしたケースで細かい調査を受けることすらないものです。
(何かを隠蔽するときは、大抵不自然な部分が生じますが、自然な依頼であればそれがないためです)
このように税務署や国税庁から疑われないという理由からも、相続放棄を確実にするためには、プロにご相談いただくのがいいかと思います。そのときの業者の選び方は下の記事で詳しく解説しています。
また、相談した結果「やはり自分ですべてやりたい」と感じた場合は、下の記事を参考にしていただけたらと思います。
【参考】遺品の処分(遺品整理)を自分で進めるには?具体的な手順を解説
まとめ
ご家族が税金を滞納された状態で亡くなられると、遺族の方としては不安に思うことが多いでしょう。不安がなかったとしても、途中で書いたように「自分で遺品整理をしたことで、相続放棄ができなくなってしまう」ということもあります。
そのようなリスクを避け、安心して相続放棄や遺品整理をしていただくためにも、専門の業者にご相談いただくのがいいでしょう。弊社・みらいプロセスは全国800以上の士業ネットワークを持っており、税金の滞納についてもスムーズに解決させていただけます。
ご相談やお見積りなどはすべて無料ですので、何でもお気軽にお問い合わせください。税金の滞納に限らず、遺品整理に関するすべてのお悩みで、皆様のお力となれることを願っております。
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