孤独死~定義と原因、男女・年齢別の統計、警察の遺体処理など~

孤独死の研究・報道には改善点が多い。第一に「定義」が決まっていない。神奈川県など「国の定義がないので、調査を実施できない」という自治体も存在する。そのため、定義の議論が必要だ。

第二に「野次馬的興味」で報道されがちである。特にご遺体の腐敗は、怖いもの見たさで報じられやすい。強い刺激を求める人間の脳の性質を考えればこれは自然であるし、その報道のおかげで実情が伝わるため、これ自体は正しいことといえる。

ただ、故人やご遺族の心情に配慮して「社会が良くなる方向に」この興味を向けることができれば、さらに望ましい。野次馬的興味を切り口として、そこから法医学警察医の活動などへの理解を深めてもらうわけだ。特に「遺体はなぜ溶けるのか」というメカニズムは、胃潰瘍を理解し、予防するのに直結する(自己消化)。

すべての人が、孤独死を深く考える必要はない。ただ、この記事を今読んでいただいているということは、何らかの形で「孤独死」と関わられているのであろう。

もしかしたら、学生さんが「レポートのコピペ用」の文章を探しているだけかもしれない。しかし、その場合も「教授たちの活動は、社会にどう役立っているのか」ということは、理解していただけるかもしれない(詳しくはこちら)。

当記事はそのように「孤独死について知りたいすべての人」のお役に立つよう、さまざまな切り口で、徹底して正確な内容を追究した。また、有益な情報を発信されている、多数のメディア・専門家・研究者の方々などを紹介させていただいている。

(内容やご紹介について、もし何かございましたら「お問い合わせ」のページからご連絡をいただけたら幸いです)

(Our company is a Japanese company. The job is to clean up the remains. Introducing high-quality information from overseas media. If you have any problems with this article, please contact me.)

遺品整理・生前整理の業者としては、本来お客さまのためにも敬語を使わせていただくべきですが、当記事は情報量が多いため、少しでも簡潔にお読みいただけるよう、すべて常体でお伝えさせていただきます。
この記事の目次

孤独死とは

社会的に孤立した独居者(および少人数の家族等)が、誰にも気づかれずに自宅等で、自殺以外の原因によって死亡すること。発見までの日数は考慮しない。

同義語として孤立死がある。公的機関は主に「孤立死」を用い、メディアや一般の人々は主に「孤独死」を用いる。

類義語として独居死がある。これは単純に「単身者が住居内で亡くなること」であり、社会的な孤立などを伴わない点で、孤独死・孤立死とは異なる。

孤独死現場の写真。ゴザの上に故人に捧げる花束が置かれている画像引用元:짙게 드리운 고독사의 그림자를 걷어내려면(韓国の「大學新聞」。韓国での孤独死の事例はこちらで解説

定義~国(内閣府・厚生労働省)とUR都市機構などの資料~

それぞれの組織の定義は、リンク先の段落で説明する。↓

ここでは、冒頭の定義の内容について「なぜその定義になるのか」を説明する。

定義の解説

社会的に孤立した

家族やご近所との交際があった場合、単純に「発見が遅れただけ」といえる。つまり「急死・突然死」である。社会的な交際があれば、餓死したり一人で病死したりはしない。

独居者(および少人数の家族)

基本的に独居者である。ただ、2人姉妹などの少人数で「孤独死」するケースもまれにある。元資産家の娘だった2人姉妹が、マンションの一室で餓死されてしまった事件だ。↓

大阪の元資産家姉妹の孤独死事件を報じたニュースの画面画像引用元:Images of 大阪元資産家姉妹孤独死事件(JapaneseClass.jp)※元のテレビ番組はわからず(画像はクリックで拡大)

こうした例外もあるので「少人数の家族」という注釈も含むべきだと考えた。「家族でなく友人だったら?」と思うかもしれないが、そのようなケースは極めて少ない。友人同士で孤独に亡くなるケースは、ほとんどが「集団自殺・心中」である。そのため「家族」までにした。

【参考】大阪元資産家姉妹孤独死事件(Wikipedia)

誰にも気づかれず

誰かに気づかれていたら、孤独死とは呼ばない。たとえば、

  • 役所との電話の最中に倒れた
  • 役所の職員が急いで駆けつけた
  • 当人が亡くなっていた

このケースでは、その電話の日まで社会的に孤立していたとしても、孤独死とは呼ばない。やはり「急死・突然死」である。

自宅などで

ホームレスの死亡は、社会的に孤立していても孤独死とは呼ばれない。路上死などと呼ばれる。死因によっては餓死・凍死・病死・自然死・変死などと呼ばれる。

アパート前の路上で眠るホームレス男性の写真画像引用元:白骨化遺体に結核蔓延…西成あいりん地区ホームレスの絶望(上)| ダイヤモンド・オンライン

また、めったにないが「社会的に孤立した旅人」が行き倒れた場合も、孤独死とは言い難い。本人がそれを望んでいたなら、松尾芭蕉の「旅に病んで 夢は枯野 をかけ廻る」に近い状態だろう。芭蕉は孤立していなかったが、旅人が望んだ死なら、当人の心境は芭蕉に近いものがあるだろう。

自殺以外

他の条件をすべて満たしていても、自殺は孤独死ではない。以下の記述が参考になる。

孤立(孤独)死に関する様々な論文や報告書を渉猟し、11 種類の定義が存在することを報告した上田27らは、これらの定義に共通するキーワードとして、①自宅内の死亡、②看取りなし、③独居、④社会的孤立(ケアがない、一定の接触がない、社会的なつながりの欠如)、⑤自殺の有無、の 5 つを挙げている.
孤立(孤独)死とその実態 | 日本医科大学医学会雑誌第14巻第3号

要約するとこうなる。↓

  • 孤独死の「定義」をテーマとした論文がある
  • その論文は、11種類の定義が存在することを突き止めた
  • 結果「自殺は含まない」のが、定義の共通点だった

ということだ。その論文というのは、こちらの段落で紹介している。

ちなみに「自殺だったが、時間が経過して死因がわからなくなった」というものは、孤独死とされることもあります。
遺品整理士黒川
遺品整理士黒川

日数は考慮しない

孤独死を定義している自治体で「発見までに日数を要した」の項目を入れているのは、2.3%である。10の自治体が定めているのみだ。↓

「発見までに日数を要した」2.3%があるが、死後の経過期間を定めている自治体はわずか10自治体のみである。
セルフ・ネグレクトと孤立死に関する実態把握と地域支援のあり方に関する調査研究報告書(ニッセイ基礎研究所)

日数を定義に含まない理由を説明する。

孤独死を定義する「目的」から考える

孤独死を定義するのは、

  • 「遺体を腐敗させない」ためではない
  • 「孤独のうちに人を死なせない」ためである

そう考えれば、日数が関係ないことは明白だ。ここまで書いた他の条件を満たしていれば、明らかにその人は「孤独のうちに死んだ」のだ。「腐らなければいい」ということはないだろう。

もちろん、賃貸経営者や保険会社(孤独死保険を提供する会社)の場合、日数の定義が重要だ。これによって、事故物件の告知義務や、保険金の金額が決まるからだ。

あくまで、行政や社会全体としては「日数は関係ない」ということだ。

【参考】事故物件の特殊清掃(当サイトの別記事)

歴史~1884年(明治17年)に読売新聞が報道

日本で孤独死が初めて報じられたのは、おそらく1884年(明治17年)10月11日の読売新聞である。「人間嫌いの高齢男性が、死後数日経過して発見される」という、現代の孤独死と同じパターンの事件であった。

1933年1月14日の読売新聞では、現代の「ゴミ屋敷」に近い状態での孤独死が報じられる。この男性には、トランク100個と靴60足を保有し、大量の新聞・雑誌・小銭に囲まれて暮らすという、典型的な「ホーディング」の症状が見られた。

孤独死を1933年に報道した新聞記事画像引用元:【PDF】孤独死報道の歴史(立命館大学大学院 先端総合学術研究科)画像はクリックで拡大

その後、1940~60年代には報道が沈静化する。1970年に「孤独死」という単語が新聞に初めて登場し、1973年には政府による全国的な調査がなされる。

1970年代後半から1980年代にかけては、報道が沈静化。しかし、1992年9月10日の朝日新聞京都版などで、行政が「見守り」などの孤独死対策をとっていたことがわかる。このため、報道はされずとも、孤独死は継続して発生していたと考えられる。

1995年から2000年頃にかけて、阪神・淡路大震災の被災高齢者が、仮設住宅で一人で亡くなる事例が相次いだことから「孤独死」が全国的に注目される。以後は発生件数・メディアの報道・行政の対策事例のいずれも、今日まで増加を続けている。

海外~韓国以外では「孤独死」という言葉がない~

海外でも当然孤独死はある。しかし件数が少ないことや「あまり問題視されていない」ことからか、「孤独死」に当てはまる言葉がない。

孤独死現場の床の写真画像引用元:【Youtube】Animal Hoarder House- 22 cats(Crime Scene Cleaning)

2011年にインドでノイダ姉妹(Noida Sisters)が孤独死した事例で、現地メディアは「このような事例は日本で多く、Kodokushiと呼ばれている」と、報道。日本の専門家に取材し、コメントも紹介していた(英語では「Lonely Death」と表記)。

他国もおおむね似たような状況だが、韓国は例外である。公営放送局のKBSが2013年に放送した「韓国人の孤独死」によれば、2013年の1年間で、1万1002件の孤独死が発生したという。

このような状況のため、韓国には孤独死を意味する「고독사」(コドクサ)という単語があり、この単語での報道が多数見られる。韓国の孤独死の特徴は、60代以上の高齢者ではなく、20代~50代の勤労世代に多いことである(いわゆるブラック労働が原因と思われる)。

孤立死との違い~内容は同じ。公的機関は孤立死を用いる~

結論を書くと、孤独死と孤立死の違いはほぼない。理由は下のとおりだ。

  • 孤立しない孤独死はない
  • 発見が遅れた「突然死」は、孤独死ではなく「突然死・急死」である
  • ↑(ご本人・ご家族の名誉のために、そう分類すべきである)

そして、わかりやすい違いを書くとこうなる。↓

  • 孤立死…行政が使う
  • 孤独死…一般で使う

さらに「人数」で分けると下のようになる

孤立死 最大4人程度まで適用される(寝たきりの両親+介護する中高年の兄弟など)
孤独死 基本的に2人まで(老夫婦や老老介護などが該当)

表の「4人」のケースは「孤立死」だったらギリギリ適用の枠に入りそうだ。明らかにこの家族は社会から孤立してしまっている。逆に、この4人家族で「孤独死」というのは違和感がある。

なお、孤立死でも「5人・6人」となると、適用しにくくなる。この規模で一斉に亡くなってしまうとなると、どちらかというと「変死」あるいは「一家心中」に近い印象を受ける。

このように「あえて違いを説明する」ことはできる。しかし「基本的に同じ」と考えてかまわない。

時事通信社…「ほぼ同じなので統一」

時事通信社の沼野容子・編集委員は、以下のように「ほぼ同じなので統一した」という旨を記している。

研究者や団体によっては「孤立死」などを使うケースもあるが、ここでは「誰にもみとられることなく死亡し、一定期間を経て発見されるケース」の意味で、「孤独死」に統一した。(時事通信社・沼野容子)
「孤独死」に備える(時事ドットコム)

同じ辞書で、双方の定義を比較

同じ辞書(デジタル大辞泉)で、双方の定義を見てみよう。

孤立死 社会から孤立した状態で亡くなり、長期間気づかれないこと。
孤独死 だれにも気づかれずに一人きりで死ぬこと。
出典(デジタル大辞泉)

違いはまず「社会から孤立しているか、していないか」だ。

  • 孤立死…している
  • 孤独死…していない

実際には、ほとんどの孤独死は「孤立」している。しかし、上のデジタル大辞泉の定義では、孤独死の方では「孤立」が条件に入っていない。

社会から孤立しない孤独死とは?

基本的に「そのようなケースはほぼない」といえる。そのため、さきほどの時事通信社の記事も「ほぼ同じなので統一した」わけだ。

「発見が遅れた突然死」は、孤独死になる?

たとえば、下のようなケースだったとしよう。

  • 急に体調が崩れた
  • 連絡したかったけどできなかった
  • ↑(日頃から、ある程度コミュニケーションがあった)
  • 連絡できないうちに、亡くなった
  • 時間が経ってから発見された

これだと、社会的に孤立していなくても「孤独死」になる可能性がゼロではない。しかし、やはり「突然死」に分類すべきだろう。

  • ご本人の名誉
  • ご家族への配慮(孤独死だと、ケアをしていなかったように思われる)

上記の2点を考えると、やはりこれは「孤独死」と分類すべきではない。

「家族は探していたけど、本人が連絡先を教えていなかった」場合

これは孤立している。確かに「愛されて」はいた。しかし、本人が「孤立」を望んだのだ。そのため、これは孤立死である。

「限界集落+インフラ遮断」は?

限界集落で、電話線などのトラブルで連絡手段がなくなり「連絡できないうちに突然死し、時間が経ってから発見された」ということもあるだろう。ただ、これも先程の「発見が遅れたケース」と同じで、やはり「突然死」とすべきである。ご本人だけでなく、周りも「あの人は孤独」などとは思っていなかったはずなので。

厚労省は「孤立死」を使う

厚生労働省の「孤立死防止対策」ページのキャプチャ画像画像引用元:孤立死防止対策(厚生労働省)画像はクリックで拡大

厚生労働省(厚労省)は「孤立死」を使っている。上の画像のように「孤立死防止対策」というページを公開している。

内閣府…孤立死メイン(孤独死も併記)

内閣府の『高齢社会白書』は、孤立死をメインとし、孤独死もカッコで併記している。

高齢社会白書の表紙画像画像引用元:高齢社会白書〈平成30年版)|Amazon(画像はクリックで拡大)

内閣府の高齢社会白書には「誰にも看取られることなく息を引き取り、その後、相当期間放置されるような悲惨な孤立死(孤独死)」と表現されている。
高齢者孤立死の現状と背景についての検討(日本交通科学学会誌 第15巻 第3号 平成27年)

内閣府の文章を引用した、上の論文のタイトルも「孤立死」である。

愛知県東海市の定義

愛知県東海市は「孤立死防止」という啓発パンフレットを発行している(PDF)。このパンフレットでは、孤独死をこう説明している。↓

“孤独死”とは、主にひとり暮らしの人がだれにも看取られることなく自宅等で突発的な疾病等によって亡くなられることをいいます。特に発症直後に助けを呼べずに亡くなられるケースがこのように呼ばれています。

太字部分のように「連絡できずに突然死した」ケースを書いている。一方、孤立死についてはこう書いている。↓

“孤立死”は、社会的孤立のために、自宅等で死後だれにも気づかれることなく遺体がそのままになるケース(特に事件性がないもの)のことをいいます。

こちらは「連絡できた・できなかった」ということは関係なく「もともと孤立していた」ケースを書いている。ただ、やはり上の孤独死の説明は「突然死」というべきだ。東海市も続けてこう書いている。↓

“孤独死”と“孤立死”の明確な定義や違いはありませんが、“孤立死”を防止するために、特に支援が必要な人の見守りが大切です。

やはり、違いを説明しようとした誰もが「違いはない」という結論になるのだ(そして、行政は「孤立」で統一しているので、東海市も最後に「孤立死」と書いて締めている)。

国民生活センター…併記

国民生活センターは、両方併記している。↓

「孤独」が主観的な概念、「孤立」が客観的な概念という違いはありますが、ここでは「孤独死」「孤立死」と併記し、(後略)
【PDF】「孤独死」「孤立死」に対する地域の取り組み(国民生活センター)

特徴的なのは「感じ方」の違いに言及している点だ。

孤独 主観的
孤立 客観的

という違いである。確かに、先ほどから書いている「発見が遅れた突然死」を、孤独死と感じるかどうかは「主観」に左右される。一方、孤立死については、その人の過去の生活状況から「物理的に証明」できる。

なぜ民間では「孤独死」が使われるようになったか

「孤立死」の方が複数人でも適用できるので、本来こちらの方が適切だ。だからこそ、国や自治体は「孤立死」を採用している。

では、なぜ民間は「孤独死」になったのか。これは最初の報道が「孤独死」だったためだ。1970年4月16日の朝日新聞である。

また東京の孤独死 一週間目発見
15日夜、東京荒川のアパートで独身青年の病死が、たずねてきた同僚によって1週間ぶりにわかった。(後略)

【PDF】孤独死報道の歴史(小辻・小林)

該当部分を画像化したもの

太字のとおり「孤独死」という単語が登場している。「また」とあるので、「これが最初ではないのでは?」と思うかもしれない。

確かに、事件としては以前にもあったが、それは「また老人の孤独な死」(1970年3月30日・朝日新聞)など、「孤独死」という一つの単語にはなっていなかった。「一つの単語」としての登場は、先ほどの「1970年4月16日の記事」が最初とされる。

この事件では「孤独死」が適切だった

この事件は、明らかに「孤独死」というべきだった。つまり、朝日新聞の表現が正しい。理由は下のとおりだ。

  • 男性は孤立していなかった
  • 実際、1週間後に同僚が様子を見にきた
  • また、男性は「急に倒れた」だけである
  • 「仕事が嫌」など、職場で孤独を感じていたわけではない(報道を見る限り)

男性は脊椎カリエスを患っており、月に2・3日は休まなければならなかった。このため、症状が急激に悪化すれば、人間関係などに関係なく「急死してもおかしくなかった」のである。

このような状況だったため、このとき「孤独死」としたのは正しい表現であった。そして、その後はこの流れで「孤独死」がメディアで使われるようになっていく。…というのが「民間で孤独死が定着した理由」である。

原因~3つの社会的背景~

孤独死が増加している原因は3つある。

個人レベルの「孤独死のリスク要因となる病気」については、こちらの段落で解説する。

単身世帯の増加…発生率は同じだが、独居者が増えている

孤独死が増えたのは「高齢者の単身世帯が増えた」ためである。実は、「一人暮らしの高齢者が孤独死する確率」は変わっていないのだ。つまり、

  • 一人暮らしで「孤独死する確率」は、昔から同じ
  • しかし「一人暮らし自体」が増えた
  • だから、孤独死の数が増えた

ということだ。これは下の記述でわかる。

<孤独死の発生率は、平成2~17年までの間で特に増加していない>
男女の孤独死の発生率は多少の変動はありますが、特に増加しているという結果は得られていません。孤独死の発生件数は年々増加していますが、これは東京都区部で一人暮らしの人が年々増加している分だけ、孤独死の数が伸びているということを意味しています。
【PDF】東京都23区における孤独死の実態(東京都監察医務院)※PDFの7ページ目

(スマホで読みやすいように、それぞれの部分を画像にした↓)

資料1資料2資料3

データは「1990年~2005年」の15年間のものである。やや古い。しかし、この時期は今と同様「孤独死が年々増えている」とされていた頃だ。

1990年代から増えていたことがわかる資料

昭和62年からの孤独死の増加を示す統計のグラフ画像引用元:【PDF】東京都23区における孤独死の実態(東京都監察医務院)PDFの4ページ目(画像はクリックで拡大)

該当ページを画像にしたもの

上のグラフを見ると、昭和63年(1988年)から、一貫して増加していることがわかる。平成9年(1997年)まではゆるやかではあるが、増加していることは間違いない。

そして、その増加していた期間(1990年~2005年)に「発生率」は変動していないと、監察医務院が証言しているわけだ。このため、

  • 「孤独死する確率」が上がったのではなく、
  • 「一人暮らしが増えた」ことが原因

といえるわけだ。

なお「一番の原因が一人暮らしの増加」ということは、少額短期保険協会も指摘している。↓

孤独死が発生する一番大きな要因として「単身世帯」の増加がある。
【PDF】孤独死の現状レポートの概要 P.2(一般財団法人・日本少額短期保険協会)

コミュニケーションの不足…OECD加盟20カ国で最少

たとえ一人暮らしであっても「他者との交流が活発」であれば、孤独死は起きにくい。実際、アメリカなどは日本より単身者が多いが、日本ほど孤独死の問題は深刻でない。

この差は「コミュニケーションの量」にある。日本はOECD加盟国中、もっとも「他者との交流が少ない」のだ。NHKもこのデータを用いて「人間関係の希薄さが孤独死の原因の一つ」と指摘している(下記)。

先進35カ国が加盟するOECD(経済開発協力機構)の調査によれば、家族以外と付き合いのほとんどない「社会的孤立」の状態にある人の割合は、日本では15.3%と、最も高くなっています。
人のつながりで孤独死を防ぐ(NHK)

同じ指摘を厚労省もしている。「孤立者」についての調査で、下のグラフのように同じOECDのデータを紹介している。

厚生労働省がまとめたOECDの統計グラフの画像画像引用元:【PDF】生活困窮者・孤立者の現状(厚生労働省)P.5画像はクリックで拡大

グラフ一番右の赤線で囲ってある部分に「日本…15.3」とある。2位のメキシコが「14.1」とそれなりに近いが、3位のチェコからは「10.0」と、大幅に下がる。日本・メキシコが「非常に孤独な国」というのが実感できるだろう(メキシコは少々意外かもしれない)。

このデータは、下記のJB pressでも紹介されている。

2005年に経済協力開発機構(OECD)が行った世界レベルの統計においても、若年者を含めた孤立傾向にある人の割合が25カ国中で日本が最も高い。
世界一孤独な日本人、あなたに話し相手はいますか?(JB press)

すべての出典であるOECDの資料は、下のものだ。ここでは「メキシコが一番右=ワースト」になっている。

OECDのグラフ画像引用元:Social isolation(Women and Men in OECD Countries)画像はクリックで拡大

しかし、よく見ると「日本がワースト」であることがわかる。

  • メキシコは「女性のみ」が突出して高い
  • 日本は「男女とも」に高い
  • 「男女の合計」なら、日本がワーストである

ということだ。メキシコの女性が孤独なのは、おそらく治安の悪さが原因だろう。

  • 安心して出歩ける場所・時間が制限されている
  • 男友達と気軽に付き合いにくい

ということではないかと思う(それにしても、日本の女性よりメキシコの女性の方がオープンなイメージがあるが…。違うのだろうか)。

何はともあれ、このようにNHK・厚労省・JB Pressなど、各所で「交流不足が孤独死の原因」という指摘をしている。

物の供給過剰…ゴミ屋敷の増加要因(孤独死の半分は汚部屋)

ゴミ屋敷や汚部屋は、孤独死のリスクを飛躍的に高める。『日刊SPA!』の下の記事のタイトルが「そのまま」説明している。

【参考】孤独死した部屋の大半はゴミ屋敷…その独特なニオイとは?(日刊SPA!)

では、そのゴミ屋敷は何が原因で起きるのか。社会的な原因としては「物の供給過剰」がある。100円均一・ネット通販などの隆盛によるものだ。

この原因については「ゴミ屋敷」の記事の下の段落で詳しく解説する。

背景…高齢化・単身化・物の供給過剰

その他の原因は同じ記事の、以下の段落でそれぞれ個別に解説する。

男女差(男女比)は最大で6倍の差

「孤独死は男性が多い」ということは、一般にも知られている。これは、グラフで見るとさらに痛感するだろう。

下のグラフは「東京の孤独死」の「年齢別」の件数だ。青線が男性、赤線が女性である。

孤独死の年代別件数のグラフ画像引用元:東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(平成29年)| 東京都福祉保健局(画像はクリックで拡大)

子どもが見てもわかるほど「男性の圧勝」である。最大で6倍の差がある。

70歳から差が埋まり始めるが、これは男性が死亡し始める(人数自体が減る)ためである。特に85歳以上は「男性の平均寿命(81歳)を超えている」ので、女性と逆転している。

(つまり「差が縮まった!」とか「逆転した!」と思っても、実は全然うれしくない(逆にひどい)理由である)

男性…ピークは60代後半(定年退職直後)

男性の孤独死のピークは「60代後半」である。60代前半からほぼ倍増している。

年齢 人数
15歳未満 0名
15~19歳 1名
20~24歳 28名
25~29歳 36名
30~34歳 42名
35~39歳 55名
40~44歳 79名
45~49歳 153名
50~54歳 204名
55~59歳 254名
60~64歳 326名
65~69歳 617名
70~74歳 550名
75~79歳 421名
80~84歳 329名
85歳以上 230名

この世代で倍増する理由は「60代」の段落で解説する。

なお、データは下記の資料から抜粋した。赤線部分のデータである(クリックで拡大)。

孤独死の件数を示した表のキャプチャ画像(男性)

「複数世帯」は孤独死ではないので「単身世帯」だけを見ている。

参考…【PDF】年齢階級(5歳階級)性・世帯分類別異状死数(自宅死亡)東京都特別区・平成29年

女性…70代から急上昇(認知症などが原因か)

女性は上昇するタイミングが2度ある。

  1. 60代後半…前半と比較して約2倍に(男性と同じ)
  2. 70代後半…前半と比較して約1.7倍に

もう一度、最初のグラフを見てほしい(クリックで拡大)。

孤独死の年代別件数のグラフ

1回目のタイミング(60代後半)でも確かに2倍になっているが、どちらかというと「その後」が重要だとわかるだろう。70代前半が終わると(つまり後半に入ると)急上昇する。

女性の方も、数値化すると下のようになる。

年齢 人数
15歳未満 0名
15~19歳 2名
20~24歳 17名
25~29歳 20名
30~34歳 13名
35~39歳 25名
40~44歳 22名
45~49歳 31名
50~54歳 43名
55~59歳 48名
60~64歳 59名
65~69歳 123名
70~74歳 132名
75~79歳 204名
80~84歳 293名
85歳以上 420名

資料は男性の方と同じで、下の画像のものだ。

孤独死の件数を示した表のキャプチャ(女性部分)(画像はクリックで拡大)

男女の統計については、今後追記・補足していく。

年齢層ごとの事例

20代…ソウルの寮で亡くなった韓国人女性

20代の孤独死は、2017年の東京だけでも101件と、それなりにある。しかし、個別の事例として報道されたものは、日本では見当たらなかった。おそらく、件数が少ないため、匿名で報道しても「特定されやすい」からだろう。

代わりに、韓国での事例は日本でも報道されている。下記のものだ。

ソウル冠岳区(クァンアック)の考試院に暮らしていたファン某氏(29)は、死亡後しばらく経ってから見つかった。言語治療士の彼女は、考試院で1年以上住んでいたが、隣人たちは誰も、彼女の死に気づかなかったという。
20代の孤独死の衝撃(東亜日報)

文中に出てくる考試院は「コシウォン」と読む。下の写真のような施設だ。

コシウォンの室内の画像(一例)画像引用元:ホテル考試院vs箱部屋考試院(ハンギョレ)画像はクリックで拡大

「考試」とはテストのことである。もともと、大学受験や公務員試験を受験するために、お金がない若者が泊まる「一時的な宿」だった。それが現代では、苦学生やワーキングプアの若者の「毎日の住居」となっている。

【参考】考試院 (宿泊施設)| Wikipedia

このように「あまり良い環境」ではないため、女性が亡くなった場所がコシウォンであったことは、韓国人にとってはある程度イメージしやすいのかもしれない。

(なお、序盤の「海外の事例」でも紹介したが、韓国は日本と違い、高齢者より若年層の孤独死が多い)

30代…アルコール依存で離婚した女性

30代での孤独死の事例は多く見られる。仕事が忙しく、20代よりも健康が崩れやすくなるためだろう。

インタビューに答えるスーツ姿の塩田卓也社長画像引用元:インタビュー「武蔵シンクタンク株式会社・塩田卓也社長(注目企業.com)

特殊清掃を手掛ける企業・武蔵シンクタンク株式会社の塩田卓也社長(写真)は、アルコール依存で離婚し、孤独死されてしまった30代女性のケースを紹介されている。↓

女性は20代で職場結婚して一人娘を出産。しかし、その後アルコール依存症が原因で、離婚。娘の親権は夫に渡ってしまったらしい。
孤独死した30代女性の部屋に見た痛ましい現実(東洋経済オンライン)

離婚後の女性は貯金を切り崩して生活し、引きこもってしまわれたようだ。そして、亡くなる寸前までお酒を手放せなかったらしい。床にはウイスキーの瓶が無造作に転がっていたという。

これだけ読むと女性がだらしない人間のように思われるかもしれないが、女性はアルコール依存症から立ち直るために努力されていた。塩田社長が現場の遺品整理をされていたとき、禁酒に関する本やカウンセリングの資料などが、ほこりをかぶって出てきたという。

本を読むだけでなくカウンセリングまで受けに行ったのだから、本気で治そうとしていたのだろう。また「アルコール依存症は病気」という自覚もあったのだ。

筆者がセルフネグレクトや孤独死の事例を調べる限り、不真面目な人よりはむしろ「真面目な人」が陥りやすい印象を受ける。アルコール依存症は「ごみ屋敷の原因とされる精神疾患」でもある。この点は、当サイト「ごみ屋敷」の「アルコール依存症」の段落で解説する。

40代…貯金1000万円のノマドワーカー女性

40代で貯金1000万円という、順調な業績を上げられていたノマドワーカーの女性でも、孤独死されてしまった事例がある。下の書籍『超孤独死社会』の著者である、菅野久美子さんが紹介されている。

「超孤独死社会」の書籍・表紙画像引用元:「超孤独死社会」書評 年間3万人の死の裏側に迫る(好書好日)※朝日新聞(画像はクリックで拡大)

女性の仕事の業績は順調だったらしく、通帳の預金残高も1000万円近くあり、金銭的には不自由した様子はなかった。しかし、仕事以外の人とのつながりを示すものは何も見つからなかった。
孤独死した40代女性「社会的孤立」が招いた悲劇(ライブドアニュース)※元記事は東洋経済)

この女性は、自宅でネット販売のお仕事をされていたようだ。一人でするお仕事のために発見が遅れた、ということもあるだろう。特にIT系ノマドワーカーは、人と会わずに仕事をできてしまうため、通常のOLさんやサラリーマンの方のように「同僚が気づく」ということが少ない。

女性は買い物依存症だったと思われ、部屋はゴミ屋敷とは言わないまでも「モノ屋敷」になってしまっていたようだ。買い物依存症のような「行動嗜癖」は、ゴミ屋敷や汚部屋につながりやすい、代表的な心理のひとつである。

(詳しくは当サイト別記事「ゴミ屋敷」の「行動嗜癖」の段落で解説)

50代…片足負傷で働けなくなった警備員男性

こちらは、一般社団法人・日本遺品整理協会の上東丙唆祥(じょうとう・ひさよし)理事が語られている事例である。

上東丙唆祥さんの写真画像引用元:一般社団法人・全日本たすけあい共同参画

取材された方は、他の事例とも重なるが、菅野久美子さんである。

菅野久美子さんの写真画像引用元:孤独死の現場から問う 独りで誰にも迷惑を掛けず、あなたは死ねるか(IT mediaビジネス)

事例の50代男性は、長年警備員のお仕事をされていた。しかし、負傷によってお仕事を辞めることを余儀なくされてしまった。

山田さんは、右足を負傷してから、杖を使うようになる。杖なくしては立てなくなり、仕事も辞めて、徐々に家にひきこもるようになっていく。
孤独死した50代警備員の部屋に見た残酷な孤立(東洋経済オンライン)

その後、セルフネグレクト状態に陥った男性は、ケガした足でトイレに行くことさえも不自由になり、ペットボトルに用を足すようになったという。

60代…退職で会社の健康診断がなくなるなどが原因

男性の孤独死は、60代がピークである。下の記事のタイトルどおりだ。

【参考】孤独死の8割以上が「男性」、ピークは「60代」(シニアガイド)

このため、個別の事例よりは「なぜ60代でピークになるのか」を説明する方が良いと考える。60代でも特に定年退職後の「65歳~69歳」が突出して多い。

書籍「男の孤独死」の表紙画像画像引用元:男の孤独死(ブックマン社)画像はクリックで拡大

この理由を『男の孤独死』の著者である長尾和宏・医師は、以下のように語られている。

(前略)65~69歳で一気に死亡数が上昇しています。これは、会社に勤務しているときは会社の健診である程度の健康状態がチェックできますし、70歳になると介護保険で自治体の健康診断でチェックされる機会があります。
孤独な60代を襲う、突然死の悲しすぎる結末(JBpress)

60歳~64歳 会社の健康診断がある
70歳以上 自治体の健康診断がある
65歳~69歳 両方ない

このように、60代後半は「健康診断」というポイントで見ると「空白の5年間」なのである。

「自分で受ければ?」と思うかもしれないが…

上の説明を見て「いや、自分で行けばいいじゃん」と思う方もいるだろう。もちろん、その通りだ。60代後半の男性でも、孤独死する方が少数派である。

ただ「受けるべき定期診断をサボってしまう」というのは、誰にでもあることだ。たとえば虫歯は、1~3カ月に一度、歯医者の検診とクリーニングに行っていれば、ほぼかからない。特に毎月PMTCを受けていれば「まず大丈夫」といってもいい。

当院では患者さまに、1~2ヶ月に1回のペースで定期検診の受診をおすすめしております。当院の予防歯科・定期検診(西方歯科医院)

本来はこの頻度で検診を受けるべきなのだが、日本人のほとんどが、このペースでは受けていない。という現実を考えると「健康診断を受ける機会がないから」という60代後半男性の「孤独死理由」も、ある程度納得できるものだろう。

ほとんどの大人の方が痛感されていると思いますが「健康を大事にする」という誰でもできそうなことが、実はとても難しいのです。
遺品整理士黒川
遺品整理士黒川

遺体~警察の処理の流れ・法医学的メカニズムなど~

孤独死を語るとき、故人のご遺体について語るのは、少々難しい部分もある。ただ、遺体の腐敗の様子を研究する「死体農場」というものも、世界各地にある。ご遺体の研究をすることは、医学や社会学などさまざまな分野の研究につながるのだ。

【参考】死体は1年以上たっても動く、豪研究者が「死体農場」で撮影し証明(AFPBB News)

また、孤独死の悲惨さや、周囲の方々へのダメージの大きさをお伝えすることも、孤独死を防止する意識を高めることにつながるだろう。ここではそのような意図を持って、孤独死のご遺体について、以下のような項目で解説させていただく。

解説に当たっては、いわゆる「興味本位」ではなく、学術的・ジャーナリズム的な視点を崩さずに書かせていただく。

警察~現場検証・司法解剖・死体検案・警察医など~

(読みやすさのために「警察官の方々」などの敬称を省略させていただきます。※個人の方以外)

警察が来たあとの流れ

孤独死が発見されると、警察が来て、以下のような流れでもろもろの対応が進んでいく。

  • 警察が検視・検案
  • 遺族に連絡
  • 現場に葬儀社が呼ばれて遺体を引き取ることも
  • 葬儀社による引き取りがなければ警察が引き取る

この流れは、下の引用文でわかる。

自宅で孤独死が発見されると、警察による検視・検案が行われる。そのとき遺族への連絡が行われ、現場に葬儀社が呼ばれて遺体を引き取るケースもあるという。
<孤独死>葬儀現場の悲痛 遺族が遺骨の受け取り拒否「あとはやっといて」(MSNニュース)

警察による現場検証の様子

これは現場の状況によって異なるが、一つの体験談として以下の引用文が参考になる。

警察官には「線香を持ってきて」と頼まれたのだが、「パニックになっていたのか、どうしても見つからなかった」。木村さんが自宅で線香を探している間に警察の作業は終わったらしく、遺体は運ばれていった。
「孤独死」に備える:時事ドットコム

上の事例で亡くなられた男性が住まれていた長屋の写真は、以下のものだ。

孤独死された男性が住まれていた長屋の外観画像引用元:時事通信社(上記文章と同じ)

お線香を探すのにどれほど時間がかかったかはわからない。しかし、長くて15分というところだろう。引用元を読んでいただくとわかるが、このケースは明らかに事件性がなかったので、警察の検証も短時間で終わったのだと思われる。

警察の連絡は「6親等の親戚」まで行く

孤独死で、警察は遺族や親戚にどこまで連絡するのか―。これは「6親等」である。下の引用文でわかる。

おひとりさまが亡くなると、警察は住民票や戸籍をたどって、6親等までの親戚に連絡をしていくことになる。もし連絡がつけば、遺体の処理や死後手続きを依頼される。
「おひとりさま」の死のトラブルが続出中! 知人、遠い親戚が大迷惑(週刊現代)

司法解剖と死体検案

現場の状況に事件性があれば、警察が司法解剖を行う。事件性がない場合は警察医が呼ばれ、死体検案が行われる。これは下の記述でわかる。

事件性がある場合には司法解剖が行われますが、事件性がなく病死と判断された場合には警察医が呼ばれます。警察署の裏にある小さな別棟で現場の状況や通院歴、部屋に残された薬など説明を受けます。その後隣の安置室に横たわる死体を診察し、死体検案書を作成します。
高齢者だけでない孤独死 8割が男性 50代から増加(琉球タイムス)

警察医とは

警察医とは特別にそうした職業があるわけではない。町の歯科医院・内科医院などで、警察に信頼されているところが個別に依頼を受ける。

たとえば、以下の写真は熊本県警察に協力されている、松田歯科医院さんのものだ(2009年のデータ)。

熊本県警察医の松田歯科医院さんの写真画像引用元:警察医|MATSUDAS(院長先生によるブログ)

警察署の安置室は、下の写真のようなイメージだ(ドアだけだが)。

警察署の遺体安置室の写真画像引用元:ハリネズミのジレンマ(ブログタイトルなし?)※Yahoo!ブログ(画像はクリックで拡大)

遺体の検案の内容

遺体の「検案」とは何をするのか。これは下の引用文に詳しい。

検案嘱託医は警察からの依頼を受け、死亡の認定などが業務になる。死因の究明は、警察が事件性の有無を判断する際の材料になるほか、感染症が死因だった場合では被害の拡大を防ぐなど重要な役割がある。
遺体一刻も早く遺族へ 嘱託医・小野さん足かけ14年 県警、検案業務を表彰(佐賀新聞LIVE)

一番重要なのは「死亡の認定」だが、さらに「感染症の被害拡大を防ぐ」という役割もある。一般に「孤独死の遺体」というと、その「処理」ばかりに注目してしまうが、感染症なら「被害の拡大を防ぐ」ことも極めて重要なのだ。

検案嘱託医(警察嘱託医)の方々も、通常は内科・歯科などのお仕事をされている。その合間に警察に協力されているので、以下の写真のように功労をたたえられ、感謝状が贈られることも多い。

社会医療法人「仁寿会」さんが川本警察署から感謝状を授与されたときの写真画像引用元:川本警察署より嘱託医の感謝状をいただきました(社会医療法人・仁寿会)

体液~一般の方の体験談・プロの証言・消臭工事など~

プロや一般の方など、さまざまな立場の方の体験談や事例を、以下のように紹介させていただく。

遺体が溶けるメカニズムはこちらの段落で解説する。

体液が滲み出した遺体を目撃された方の体験談

Yahoo!JAPAN不動産の質問へのベストアンサーで、以下のような体験談が寄せられている。

私も、所有マンションの1室で孤独死された遺体を発見した事があります。
夏場だったので、遺体は腐っていて部屋中体液でぐちょぐちょ、お腹はガスがたまってパンパンにふくれていました。
まだ若い女性だったのですが…。

隣人の孤独死、死臭について。 (Yahoo!JAPAN不動産)

若い女性の孤独死は、決して珍しくない。東京23区では、15歳~49歳で孤独死される女性が、2017年で130名みえた。(詳しくは「女性」の段落で)

東京23区だけでこれだけ見えるので、全国ではこの年齢層の女性の孤独死が1000件前後は存在するのではないかと思われる。

体液が干からびてタール状になる事例

ご遺体の発見までの時間が長かった場合、体液が干からびてタール状になってしまうことも少なくない。ノンフィクションライターの菅野久美子さんは、実際に多くの特殊清掃の現場を経験されている方だ。

著書『孤独死大国』を手に持たれている菅野久美子さんの写真画像引用元:SPECIAL対談「年間孤独死者数3万人という現状をもっと多くの方々に知ってほしい」(フリーライター・菅野久美子)| 不動産・相続お悩み相談室

菅野さんは、その経験を以下のように話されている。

(前略)それらが京子さんの体液なのか皮膚なのかもはや判別がつかなくなった、どす黒いタールのような液体の上に浮かんでいた。すぐにそれは液体というより、液体が干からびた粘着質っぽい塊であることがわかった。
どろどろに溶けた遺体――壮絶な現場から見える「孤独死大国」の危機(2ページ目)| 週刊女性PRIME

遺体が溶けて体液だけになり、床に染み込んでしまった現場の写真画像引用元:週刊女性PRIME(上の文章と同じ)

上の写真は、孤独死が発生した千葉県の一戸建ての現場のものである。体液が床下まで染み渡ってしまったため、家ごと取り壊しすることになったそうだ。

【関連記事】孤独死の原状回復(当サイトの別記事)

4日で浸出した体液が床下に染み込んだ事例

「コワ~い不動産の話」の書籍 表紙画像画像引用元:住宅情報誌が書かない コワ~い不動産の話(Amazon)画像はクリックで拡大

「ビジネスジャーナル」は、別冊宝島取材班による書籍『住宅情報誌が書かない コワ~い不動産の話』の中の、下記のエピソードを紹介している。

たった4日で遺体から浸出した体液はフローリングに見事な人型を作って広がり、廊下にまで赤黒く厚みのある巨大な瘡蓋(かさぶた)のような染みを作っていた。床下収納から建物の床下を覗いていた清掃業者の社員スタッフがぼやく。どうやら腐敗した体液がフローリングとドア枠の隙間から浸出し、床下も汚染されていたようだ
親の孤独死、遺体の体液で実家が汚染…相続財産が負の遺産に、高額な負担も(ビジネスジャーナル)

太字部分は解説が必要かもしれない。通常、体液に限らず液体は「床下までは染み込まない」。理由は「フローリングがある」からだ。

フローリングを貼っている作業風景画像引用元:【YouTube※音が出ます】DIY|フローリングの貼り方 -捨て張り編(RESTA)画像はクリックで拡大

もちろん、フローリングが劣化していれば染み込むこともある。ただ、そのスピードは遅い。

引用文のケースの場合「フローリングとドア枠に隙間があった」ため、そこから浸出した。フローリングが「貼り付ける」タイプのものだと、大抵この隙間はあるはずだ(ゼロにするのは物理的に難しい)。

孫子の兵法で「兵の形は水に象る(かたどる)」というものがある。「水のように自由自在に形を変え、どんな場所にも侵入・突破できる軍隊が理想」という意味だ。

液体は良くも悪くもそのような性質を持っており、こうして「わずかな隙間から染み込んで、床下まで工事が必要になってしまう」ことがある。

体液が染み込んでしまわれた場合の工事

ご遺体の体液が床に染み込んでしまわれた場合「どこまで浸透しているか」を調べる必要がある。浸透した部分をすべて除去しなければ、匂いの除去もできない。

【参考】孤独死の匂い(当サイトの別記事)

この除去工事については、岡山の遺品整理・生前整理会社であるココピアさんの、以下の記事が詳しい。

株式会社ココピアさんが、体液が床に浸透した現場で、床板を外して原状回復作業をされている様子の写真画像引用元:孤独死の現場から① 体液のゆくえ(岡山の遺品整理・生前整理専門・株式会社ココピア)

床板だけでなく、その下で床を支える床材(柱のようなもの)や、さらにその下のコンクリート部分まで検査されている。そして、コンクリート部分も体液がこぼれ落ちた部分については除去されている。

ご遺体の体液が染み渡ってしまった現場で原状回復を依頼するときは、業者がここまで検査して除去工事をしてくれるかどうかを、見積もりの段階でご確認するようにしていただきたい。

腐敗~経過日数・高温(沖縄)の事例・緑色になる理由

孤独死されたご遺体は、残念ながら時間を減るごとに腐敗してしまう。この現象がどの程度のスピードで進むのか、知識がある方が社会としても対策を立てやすいと考える。そのため、ここでは、以下の3点について解説させていただく。

経過日数ごとのご遺体の腐敗の状況

特殊清掃ロードさんの公式サイト・キャプチャ画像画像引用元:特殊清掃ロード(画像はクリックで拡大)

特殊清掃ロード・代表の鎌田爵宏氏は、プレジデント・オンラインで以下の記事を執筆されている。

【参考】トイレで死後3カ月”特殊清掃代34万円”(プレジデント・オンライン)

上の記事に書かれている「ご遺体が腐敗するまでの日数」は、夏場で以下のようになる。

経過日数 ご遺体の状態
3日 腐敗が始まる、糞尿・体液が滲み出し、異臭が出始める
5日 蛆(ウジ)が湧き始める
1週間 数万匹というハエの大群が群がり始める
2週間 故人を特定できないほど腐敗する。警察が本人確認のためにDNA鑑定を行う

夏というのは「日本の平均的な夏」を指されているだろう。参考までにロードさんの対応エリアを紹介すると、関東・近畿のほぼ全都府県である。

つまり、本州の一般的な都府県で、夏場であれば上記のような日数になると考えていただきたい。

沖縄は「1カ月で骨だけ」に(琉球大大学院)

上の説明で多くの方が気になったのは「沖縄だとどうか」ということであろう。琉球大学大学院医学研究科法医学講座によれば、1カ月で骨だけになるそうだ。

高温多湿の沖縄では遺体は数日で腐敗し、異臭やハエの発生で孤独死が発覚することが多いという。死後1カ月ほどで骨だけになってしまい、死因が特定できない場合がある。
沖縄の孤独死の実態 3年で431人、平均59歳、8割男性 飲酒が原因多く(琉球新報)

骨だけということは、もう「腐敗するものがない」ということだ。ここからは匂いがどんどん薄まっていき「時間が経つほど発見されにくい」状態になっていく。沖縄なら、わずか1カ月でその段階に到達してしまうということだ。

(逆にいうと、そこまでの腐敗は本州より早いので、発見が早くなるケースが多いと思われる)

腐敗した遺体はすべて緑色になる

「遺体が緑色になることがある」というのは、多くの人がホラー映画やサスペンスドラマなどで見聞きし、知っているだろう。しかし「緑になる遺体は限られている」と考えている人が多いのではないだろうか。

筆者もそう思っていたが、実は「遺体が腐敗すると、必ず緑色になる」そうだ。法医解剖医で、兵庫医科大学・法医学講座・主任教授の西尾元先生(写真)が、以下のように語られている。

【西尾教授】死に際してひとつ平等なことがあるとしたら、誰しも死んで腐敗すると緑色になる、ということでしょうか。腸の中の細菌が産生する硫化物が血液のヘモグロビンとくっつき、全身が緑色になるんです。
「全身が緑色」解剖医がみた孤独死の最期(3ページ目)※無料会員登録が必要(プレジデント・オンライン)

西尾元教授のポートレート写真画像引用元:プレジデント・オンラインの同じ記事(2ページ目)

ちなみに、硫化水素と結合すると、ヘモグロビンは機能が停止してしまう。これは下の引用文でもわかる。

硫化水素は血液中で酸素を運ぶヘモグロビンなどと結合して、これらの物質の機能を停止させ…(後略)
還元環境と小型底生生物(熊本大・沿岸域センター)

故人という「人間」が亡くなったあと、体内でまだ活動している「ヘモグロビン」も、後を追って死滅してしまう…というイメージだろうか。

なぜ溶ける?~自己消化・融解のメカニズム~

主に下の2つの作用による。

自己消化(胃液が内臓を溶かす)

一番わかりやすいのは、胃液による「自己消化」だ。胃液の酸性は非常に強い。pH(ペーハー)は「1」である。簡単にいうと薄めた硫酸に次ぐ強さである。

pH 液体 酸性の強さ
0未満 鉛蓄電池の電解液 とても強い
0 10%硫酸(希硫酸) とても強い
1 胃液 とても強い
2 レモン果汁 強い
3 やや強い

【参考】Wikipedia「水素イオン指数」の「水溶液の液性」の段落

硫酸で人体が溶けることは有名だ。人間に硫酸をかける「アシッドアタック」という攻撃もある。

アシッドアタックの被害と戦う女性・ケイティ・ジーさんの顔写真画像引用元:酸攻撃に遭い地獄を見た女性「誰にも醜いとは言わせない」(ニューズウィーク日本版)

そのくらい強いので、たとえば「胃酸に他の動物の内臓を入れる」と、数時間で溶けてしまう。下の記述のとおりだ。

胃液に動物の胃の一部を入れると、数時間後には消化されて溶けてしまいます。
胃の不思議|胃自身が消化されない理由(第一薬品工業株式会社)

なのに、なぜ普段「自分の胃」は消化されないのか。これは下の3つの理由である。

  1. 「胃粘膜」で保護している
  2. 胃液を中和する「重曹」を生成している
  3. 細胞増殖を活発にして、胃壁を小まめに再生している

わかりやすく書くと、下のようになる。

胃液をどうする? 何によって?
ブロックする 胃粘膜で
薄める 重曹による中和で
やられても修復する 細胞増殖で

【参考】Wikipedia「胃粘膜」の「胃と胃液」

そして、これが「死ぬとできなくなる」。

  1. 胃液が、まず胃を溶かす
  2. 胃の外に溢れ出す
  3. 他の内臓も溶かす
  4. 内臓だけでなく、肉も溶かしていく

これが「胃液による自己消化」だ。正確には、肉を溶かすのは「胃液だけ」ではない。しかし、胃液で溶けるメカニズムはこのようなものだ。

死ななくても、不健康な生活をしているとやはり「胃の自己消化」が少し起きます。これが胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍です。
遺品整理士黒川
遺品整理士黒川

自己融解…消化酵素が細胞を溶かす

自己融解は「消化酵素」で起こる。

自己消化 「胃液」で起こる
自己融解 「消化酵素」で起こる

私たちは、普段胃袋で、食べ物を「大体」溶かしている。しかし、全部溶かした(分解した)わけではない。その後に腸で「消化酵素」によって、完全な分解をしているわけだ。

そして、この「消化酵素」は、人間が死んでも生きている。これは動植物でも同じだ。

私たちはスーパーの野菜や肉という「植物・動物の死体」から、酵素を補給している。同じように、人間が死んだ後も「酵素は生きていて」「積極的にいろいろ分解している」のだ。

【参考】Wikipedia「自己融解」

消化酵素は「人体の何を」溶かすのか?

「人体の60%は水分」というのは知っている人が多いだろう。この時点で「6割溶ける」のは、すぐ納得できるはずだ。

残り4割だが、水分以外ではおおよそ下の割合になっている。

たんぱく質 18~20%
体脂肪 15~23%
4~5%

【参考】【PDF】測定結果の見方「体組成分析」| 群馬県太田市・総合健康センター

このうち「タンパク質・体脂肪」を分解するわけだ。「タンパク質や脂肪を分解する酵素」というのは、栄養学の分野で聞いたことがあるだろう。

ちなみに、肉体が溶けても骨は残る。分解は多少されているはずだが、実際の現場では、骨は常に残っている。

酵素が分解したら、なぜ「液体になる」のか

実は、先に紹介したWikipediaの「自己融解」でも「分解され軟らかくなる」までしか書かれていない。最終的に液体になる理由は調査中だ(ご存知の方がこれを読まれていたら、ご教授いただけると幸いです)。

あくまでイメージだが「細胞膜が壊れて、中の細胞液が染み出す」のではないかと思う。動物の細胞が下図の左側の、3重構造になっているというのは、学校で習っただろう。

動物と植物の細胞の構造を示した図画像引用元:細胞のつくり(りかちゃんのサブノート)

外側 細胞膜
内側 細胞質
中心

中を浸している細胞「質」だが、これは細胞「液」と考えてかまわない。下記のとおり「ほとんど液体」だからだ。

細胞質基質は半透明な液体であり、様々な細胞質の要素がその中に漂っている。
Wikipedia「細胞質」の「細胞質基質」の段落

この細胞液が滲み出してくる(=全部の細胞が液体化する)のが、「消化されると液体になる」理由ではないかと思われる(ここからは完全に理科の話になるので、ここで終わろう)。

遺体が溶けても骨は残る

孤独死で溶けた遺体でも、骨は残っている。「遺体が溶けた現場の写真」を見ると、当然ながら骨はいつもない。また「肉体が全部溶けていた」などと書かれるので、何となく「骨も溶けて全消滅している」というイメージがあるかもしれない。

しかし、骨はしっかり残っている。実は、これは特殊清掃の業者でも目にすることが少ない。「警察がお骨を回収」しているからだ。

警察はなぜお骨を回収するのか

これは「骨しかない」からだ。肉体が残っていれば、当然肉体ごと回収する(腐敗していても)。

肉体が溶けても骨は残ることがわかる記述

まず下の記述である。

ずり落ちてしまった頭皮の一部や小さな骨などが落ちていることも多く、それらの遺物はあとで専門の処分場へ送るので、まとめておかないといけません
(中略)
「風呂の水が溶けた体液で茶色く濁っていて、骨なども沈殿しています。そのまま下水には流せないので、ポンプで汲み上げてトイレから流して処分します」
「特殊清掃業」の想像を絶する労働現場…孤独死、常軌を逸したゴミ屋敷(gooニュース)

1つ目の太字の「小さな骨」というのは、大きな骨は警察が回収しているためだ。2つ目の太字は「お風呂の中で遺体が溶けてしまったケースでも、まだ骨は残る」ことがわかる。

2ヶ月間、お風呂で追い焚きを続けても骨は残る

お風呂の追い焚き機能をつけたまま、故人が亡くなってしまった―。というケースでは「ずっと追い焚きをし続ける」ことになる。このケースでも骨は残っていたという。

「冬場に浴槽の中で亡くなった方の現場を再現しました。発見されるまでの2カ月間、追い焚き機能で温かいままでしたので、腐敗がすごく進んでしまっていました。皮膚や内臓は骨から分離してしまって、お湯に溶け込んでしまうため、湯が『血の色が濃くなったような』色になっているんです」
「孤独死の現実」伝えるため…“凄惨現場”発信する27歳女性業者(exciteニュース)

太字のように「お湯に溶け込んだのは皮膚・内臓だけ」ということがわかる(もちろん筋肉も溶けている)。この状態でも骨は残っているのだ。

状況によっては皮膚も残る(ミイラ化)

亡くなられた状況によっては、骨だけでなく皮膚も残る。これは下の引用文でわかる。

体内の水分が流れ出て床などにしみこむと遺体は乾燥します。例えば、床がたたみの場合、水分はしみこみやすいですよね。遺体には骨と皮が残りますが、腐敗した遺体に比べてにおいは少ないので周囲も気づかないかもしれない
孤独死の息子の遺体は「異臭なきミイラ化」、真隣に住む両親と別生活の果てに(Infoseek News)

このご遺体の状況は「即身仏」とよく似ている。同じ原理で「生きながらミイラになった」歴代の修行僧を、今も日本の各地で拝むことができる。

即身仏画像引用元:山岳信仰の象徴「即身仏(ミイラ仏)を訪ねて | つるおか観光ナビ ※一般財団法人・鶴岡ツーリズムビューロー運営(画像はクリックで拡大)

引き取り拒否~遺族・親族・大家に関する法律~

孤独死では、遺体の引き取り拒否が多い

近藤恭司さんのポートレート写真画像引用元:<孤独死>葬儀現場の悲痛 遺族が遺骨の受け取り拒否「あとはやっといて」(週刊女性PRIME)

株式会社ティアの執行役員・近藤恭司さん(写真)が、以下のように話されている。

ご遺族を探す場合、最初は故人様の親や子から始まり、兄弟、甥姪の順に探しますが、甥や姪だと拒否することが多くなってきます。実の子供ですら“疎遠だからもういいよ”というのもあります。受け取りを拒否されるのは私たちもショックです。
疎遠だからと遺骨の受け取り拒否も 増える孤独死と葬儀現場の悲痛(ライブドアニュース)

引き取り拒否できるのか?

齋藤則之弁護士のポートレート写真画像引用元:齋藤則之(霞門法律事務所・弁護士紹介)

同居家族は原則できない。これは、霞門法律事務所の齋藤則之・弁護士(写真)による、以下の説明でわかる。

戸籍法(87条)は、人が死亡した場合、「同居の親族」、その他の親族、家主等の順序で、死亡届出をする義務を課しています。これを手掛かりにこの問題を考えると、少なくとも、同居の親族には遺体の引取りと埋葬する義務が認められます。
事例1(遺体引取り)| 霞門法律事務所

逆にいえば、孤独死は同居していないので、引取義務はないといえる(実際ないのだが)。

戸籍法87条とは?

これは「誰かが死んだら、以下の順番で死亡届を提出する人が決まります」という法律だ。

  1. 同居の親族
  2. その他の同居者
  3. 家主・地主・家屋や土地の管理人

全文は下の通り。

第八十七条 次の者は、その順序に従つて、死亡の届出をしなければならない。ただし、順序にかかわらず届出をすることができる。
第一 同居の親族
第二 その他の同居者
第三 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人
戸籍法第87条(e-Gov)

上の文章を見て「家主」という部分が気になる人もいるだろう。これは「大家」のことだ。

「アパートやマンションの入居者が孤独死したら、大家に遺体の引き取り義務があるのか?」と思うかもしれない。あるいは、それを調べるためにこれを読んでくださっている大家さんもいるだろう。

入居者が孤独死したら、大家の遺体引き取り義務はある?

これは基本的にない。下の記述でわかる。病院の例だが、このケースでの病院は「身寄りのない患者の家主」のようなものだ。このケースは、アパートの大家などにも応用できる。

病院から市町村長に連絡すれば、市町村長が葬祭を行い、葬祭費用は、死者の遺留金などの財産から支出することになります。
また、戸籍法に基づく死亡届は、戸籍法第87条の同居の親族などの届出義務者がいないことが明らかですから、病院長が行う必要があります。
【PDF】身寄りのない入院患者の死亡(北海道医師会)

1行目では「連絡すれば、火葬・埋葬は自治体がやってくれる」ことが書かれている。2行目では「それでも、死亡届だけは病院長=家主がする」ことが書かれている。

同居の家族・親族・友人・恋人などは拒否できる?

これはグレーゾーンだが、実は「拒否できる」ようだ。もちろん、先の齋藤弁護士の説明は、立場上グレーなことは言えないので「義務が認められます」という表現になっている。

では「実情はどうなのか」というと、以下の文献が参考になる。

遺体を引き取る義務が誰にあるか、ということを明確に定めた法律はなく、また、そのことを明確に判示した裁判例も見当たりません。
【PDF】患者の遺体の引き取りを申し出る者がいない場合、どのように対応したらよいか?(メディカルオンライン)

つまり「義務を定めた法律も判例もない」ということだ。

法律がないのになぜ判例もないのか(国と遺族の争いがなかったのか)

これは「火葬の料金が安い」ためだ。

自治体 料金(大人1名)
北秋田市 3,000円
大阪市 10,000円
東京都 61,000円

東京のみ6万円と高いが、他は大阪市のような大都市でも1万円と、非常に安い。この程度の金額なら「裁判などするまでもない」「早く火葬して手続きを終わらせた方がいい」のである。

これは役所が面倒くさがっているということではなく「他にやるべき仕事が山積み」なのだ。当たり前だが、犯罪を防止したり、次の孤独死を防止したりする方が、はるかに価値がある。

…という理由から、過去に引き取り義務を争った判例などもないのだと思われる(推測だがおそらく正しいだろう)。

自治体は遺体を引き取ってどうする?

埋葬・火葬が義務付けられている。下記の「墓地、埋葬等に関する法律」の第9条で決まっている。

第9条 死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。
墓地、埋葬等に関する法律(厚生労働省)

親族・大家などが死亡届すら提出しなくていいケース

孤独死では、親族や大家が「死亡届すら出さなくていい」というケースがある。「遺体の状態が悪く、本人かどうかDNAで確認できない」という場合だ。これは下の記述でわかる。

遺体の状況が良く身元が分かれば大家さんが自治体に死亡届を提出。遺体の状況が悪い場合は行旅死亡人として対応される。(自宅などで本人と推測はできても、身寄りがないのでDNA鑑定で本人と断定できない)
アパート経営における高齢者の受入れについて?(合同会社Gugenka)

上の内容を表にすると、下のようになる。

遺体の状況 死亡届の提出義務
良い 大家に義務がある
悪い 誰にも義務がない(自治体が行旅死亡人として処理)

引用文にあるとおり「遺体の状況は悪いが、部屋や身分証などから身元がわかる」という場合でも、大家には義務がない。DNA鑑定をしない限り「入居者本人」という証拠がないためだ。

(別人の遺体がそこに放置されて、本人は生きている可能性もある。サスペンスのようだが)

リスク要因となる病気・5つの病名

孤独死のリスク要因と指摘される病気で、主だったものを一覧にすると以下の5つとなる。

ただ、過剰に気にしないでいただきたい。日本人より不健康(健康寿命が短い)外国人が「孤独死をまったく気にしていない」のだから、日本人は気にしすぎかもしれない。

健康管理は大事だが「孤独死を怖がらない方が、孤独死しにくい」という可能性も、意識していただけたらと思う。

高血圧

孤独死や突然死は「突然、血管が切れる」というイメージがあるだろう。そのイメージどおり、孤独死でもっとも多い症状は「高血圧」である。これは下の論文でわかる。

(前略)高血圧が46%で第1位となっている。この点からも、「高血圧」に対する予防対策を急ぐべきである。
【PDF ※クリックでダウンロードが始まります】孤立した高齢者の死に関する一考察(花園大学社会福祉学部研究紀要・第17号)

正確には、高血圧は「病気」ではない。高血圧はあくまで、血圧が高いことが続く「状態」である。その「高血圧によって起こる病気」の例が、以下のものだ。

脳血管障害 脳卒中・くも膜下出血・脳梗塞・脳出血
心臓病 心筋梗塞・心不全・狭心症・心肥大
腎臓病 腎不全・腎硬化症

「誰でも知っている病気」が多いと思う。高血圧は「万病の元」なのだ。

一番の「病気」は高血圧である

高血圧はあくまで原因なのだが、上記のように「万病の元」である。そう考えたら「一番の病気」といってもいいだろう。

たとえばオムロンも、下の記事タイトルのように「高血圧=病気」というくくりで、素人向けにやさしく説明している。

【参考】高血圧とは、どんな病気?(オムロン)

医学的な分類にこだわるより、要は「血圧を下げる」とシンプルに考えよう。そのために必要なことも、誰もが知っているようなことだ(ストレスを溜めない、栄養・睡眠・運動など…)。

糖尿病

糖尿病がリスク要因になることは、下の記述でわかる。

2008年~2015年の間に定期通院していた糖尿病患者(1469人)のうち101人の死亡者がでたが、うち孤独死は8人であった。
定期通院糖尿病患者の孤独死の現状とその対策(第4報)| 月刊保団連2016年12月号

8人というと少なく思えるかもしれないが、とんでもない。101人中の8人なので、割合でいうと「約10%」なのだ。糖尿病になると、10%の確率で孤独死するということになる。

あくまで概算だが「日本人全体」の場合、孤独死状態で亡くなる確率は「2%」である。以下の統計でわかる。

年間の孤独死者数 2.7万人(推計)
年間死者数 134万人
孤独死の確率 2%(2.7万÷134万)

出典は下の2記事だ。

つまり、単純計算だが糖尿病にかかると、孤独死の確率が5倍になるのである。

アルコール依存症

アルコール依存症は、正式な病気である。下の2つの国際的基準によって分類されている。

米国精神医学会 DMS-3・DSM-3R・DSM-4
世界保健機関(WHO) 精神および行動の障害-臨床記述と診断ガイドライン(ICD-10)

【参考】わが国におけるアルコール依存症の診断・治療の変遷(精神神経学雑誌)| 日本精神神経学会

そして、これが孤独死の原因になりやすいことは、下の記述でわかる。

一人暮らしのアルコール依存症の男性は、孤独死に至りやすい典型(後略)
「孤独死」の約7割が男性、いつか訪れる死の現実(ダイヤモンド・オンライン)

アルコール依存症が原因で孤独死されてしまった、30代女性の事例も、当記事で紹介させていただいた。若い方でも、依存症になってしまうと危険である。

ニコチン依存症

ニコチン依存症(タバコ依存症)は、正式な病気である。下のように、1987年には「正式な病気」に分類されていた。

時期 主体 出来事
1980年 米国精神医学会 DMS-3で「たばこ依存症」と分類
1987年 米国精神医学会 「ニコチン依存症」として正式に疾患と認定
1995年 日本 WHO「国際疾病分類第10版」を採用(この中にニコチン依存症もある)
2006年 日本 禁煙治療・外来への保険適用が決まる

【参考】禁煙治療のこれから 「ニコチン依存症」保険適応の背景と今後の課題(医学書院)

孤独死される方が「タバコを吸っていることが多い」という証言は、下の記事でも見られる。

現役世代の孤独死現場の共通点は、薬、インスタントラーメン、お酒、タバコが見つかることなんです。
30~40代の「孤独死」壮絶な後始末に見えた現実(東洋経済オンライン)

そして、多くの方がご存知のように、タバコには「肺がん」のリスクがあり、「寝タバコによる火災」のリスクもある。以下のように、ダイヤモンド誌でも指摘されている。

さらに、タバコ依存にはガンや火事などのリスクがつきまとう。
「孤独死」の約7割が男性、いつか訪れる死の現実(ダイヤモンド・オンライン)

「一般的な量で吸う」程度なら、大きな問題はないだろう。タバコを吸っていて、社会的に成功している方、社会に貢献している方も多い。

ただ「ニコチン依存症」になってしまうのは、明らかにまずい。「該当するかもしれない」と思うヘビーユーザーの方は、一度セルフチェックをしていただくのが良いだろう。

【参考】ニコチン依存度テスト(TDS)| 健康ひょうご21・県民運動ポータルサイト

精神疾患(躁うつ病など)

精神疾患が孤独死の原因になるかはケースバイケースである。むしろ「精神疾患がない人より孤独死しにくい」という場合もある。理由は「周囲がケアしていることが多い」ためだ。

もちろん、周囲のケアがなければ孤独死の大きなリスクとなる。具体的な精神疾患を名称であげると、概ね「ゴミ屋敷につながりやすい精神疾患」と共通する。

これについては、当サイトの別記事で「ゴミ屋敷の要因となる病気(精神疾患)」として解説しているので、こちらを参照していただきたい。

英語の孤独死

「孤独死を英語で何というか」は、語学を超えたテーマである。なぜなら「孤独死という概念が、英語圏にはない」ためだ。ここではこの点も含め、以下のトピックスをお伝えする。

単語がない(Lonely Deathなど普通に表現)

驚くかもしれないが、英語には「孤独死」という単語がない。そのため「普通に」以下のように英訳する。

英語 直訳 英和辞典の訳
Solitary death 単独の死 孤独死・孤立死
Unattended death 無人の死 看取られない死
Lonely death 孤独な死 存在しない

英語版Wikipedia「Kodokushi」の内容

英語版Wikiでは、概要で以下のように書かれている。

Kodokushi (孤独死) or lonely death refers to a Japanese phenomenon of people dying alone and remaining undiscovered for a long period of time.[1] The phenomenon was first described in the 1980s.[1] Kodokushi has become an increasing problem in Japan, attributed to economic troubles and Japan’s increasingly elderly population.[1][2] It is also known as koritsushi (孤立死) and dokkyoshi (独居死).
Kodokushi(Wikipedia)

日本語に翻訳すると下のとおり。

「Kodokushi」は日本の社会現象で、一人きりで亡くなった人々が長時間発見されないものです。この現象は1980年代に初めて報道されました。Kodokushiの問題は、日本の不景気や高齢化に起因して、さらに深刻になっています。Kodokushiは、Koritsushi(孤立死)やDokkyoshi(独居死)とも呼ばれます。

概要部分は英語で「397文字」だが、全体では「5679文字」と、それなりのボリュームで書かれている(上の概要のおよそ15倍)。

「独居死」について

英語版wikiの「独居死とも呼ばれる」という部分で「そうなのか?」と多少驚いた人もいるだろう。多くの日本人は、言葉の意味は当然わかるが「独居死なんて言うか?」と思うに違いない。

一応、言葉としては存在する。しかし、Wikipediaでは「孤独死」に自動転送される。↓

Wikipedia「独居死」(自動転送されない、手動転送のページ)

Weblio辞書の「独居死」のページも、孤独死のページが表示される。Wikiの内容をそのまま使っているので、Wikiと同じく「独居死から転送」という文字が最初に書かれている。

Weblio辞書「独居死」

独居死を扱った論文

独居死を扱った論文もある。「法医剖検例調査に基づく独居死の発見と精神疾患の関連」というタイトルのものだ。東京慈恵会医科大学の入井俊昭研究員による論文で、「第15回 日本心身健康科学会」の奨励賞も受賞されている(リンク)。

代表者は入江氏で、他に東京慈恵医科大学の岩楯公晴・教授(写真)と、↓

岩楯公晴教授の顔写真画像引用元:法医学講座(研究室)の概要|東京慈恵会医科大学

上智大学名誉教授・人間総合科学大学名誉教授の、青木清氏(写真)が、執筆者として名を連ねられている。↓

青木清教授の顔写真画像引用元:青木清(教員紹介)| 人間総合科学大学

「上智大学の名誉教授も関わっている論文」といえば、レベルの高さが伝わるだろう。このような論文のメインテーマとなっているので、独居死という言葉は、一般には使われないものの「正式な用語のひとつ」と考えていいだろう。

(論文の発表は2012年なので、古い内容でもない)

独居死(独居者が自宅において死亡状態で発見されたこと)
法医剖検例調査に基づく独居死の発見と精神疾患の関連(J-Stage)

海外では孤独死を問題視しない

上記の英語は、クーリエ・ジャポンの記事を参考にしている。その記事では、ネイティブスピーカーが以下のようなアドバイスもしている。

米国などでは話題になるようだけど、たいていの国の人は、“Dying alone is a not a big deal!“(孤独死なんてたいしたことない!)と思っているから、騒ぎ立てないほうが得策かもね。
孤独死(クーリエ・ジャポン)

太字部分で2回驚くだろう。まず1つ目「アメリカでは話題になっている」ということだが、話題になっているのに、特定の用語がまだないのだ。つまり「あまり問題になっていない」のである(日本で「孤独死」に相当する言葉がないなど、考えられない。過労死も同じ)

続いて、さらにアメリカ以外の国は「孤独死なんてたいしたことない!」と思っているらしいのだ。もちろん、このネイティブスピーカーさんが世界のすべてを見てきたわけではないだろう。しかし、

ということを考えると、おそらく事実なのだろう。

実際、筆者もさまざまな国を放浪してきて「日本以外の国は、経済格差も野垂れ死にも当たり前」という印象を受けた。汚い格好でおしゃれな人の隣を通り過ぎても、日本と違って気にならない。「それが日常」だからだ。

実際、心配性の原因となる「恐怖遺伝子」を持つ人の割合は、日本人が「97%」で圧倒的に多い。南アフリカはわずか32%である。

アメリカの白人は77%で、意外と「世界でも怖がり」な部類である。先の説明のように「アメリカでは話題になっている」というのは、そのためだろうか。

【参考】日本人は世界一の怖がり屋さん!?日本人の97%は恐怖遺伝子を持っている

孤独死を怖がらない方が、孤独死しにくい?

「病気を怖がる方が病気になりやすい」ということはよく言われる。病気については賛否両論があっても「ハゲを気にすると、逆にハゲる」というのは、多くの人がおそらく納得しているだろう。

古典的な名著、アランの『幸福論』でも、同じことが書かれている。

アラン「幸福論」の書籍画像画像引用元:幸福論(岩波文庫)Amazon(画像はクリックで拡大)

アランが兵士として戦場にいた頃の、上司の伍長(隊長)のエピソードだ。これは逆に病気を喜んでいたら、あっという間に治ってしまったという内容である。

(伍長が)ある日ぼくの塹壕にうれしそうな顔をしてやってきた。

「今度こそ俺は病気だ。熱がある。軍医もそう言った。明日また診てもらうのだ。多分チフスだろう。もう立ってもいられない。目が回る。とうとう病院行きだ。二年半も泥にまみれていたのだから、俺がこの好運をいただくのは当然さ」と彼は言った。

しかし、喜びのために彼の病気は治りかけているのが、僕にはよくわかった。翌日になると、もう熱どころではなかった。フリレー(その時、彼らがいた戦場)の心地よい廃墟を横切って、最悪の陣地に行かなければならなかったのである。P.290 後ろから6行目

病気になって、隊長が心底うれしかっただろうことが伝わってくる。そして、アランがそれを見ながら「あーあ」と思っていた様子も伝わる。

アランの肖像写真画像引用元:エミール=オーギュスト・シャルティエ(アラン)| Wikipedia(画像はクリックで拡大)

小学生や中学生のとき、風邪で学校を休むのが決まったあと、急激に体調がよくなった経験は、多くの人にあるだろう(示す必要があるかわからないが、出典↓)

こうした事例を思い出しても「病は気から」は間違いないといえる(ポジティブにいえば、健康は気から)。

「孤独死」という言葉を作るから、孤独死する?

アランの『幸福論』のテーマは、多くの日本人によって一言で表現されている。聞いたことがある人も多いだろうが「幸福だから笑うのではない、笑うから幸福なのだ」という言葉だ。

この言葉を孤独死に当てはめると「孤独死があるから、言葉が生まれたのではない。言葉を生んだから、孤独死が起きるのだ」といえるかもしれない。

実際、孤独死が問題だと騒いでいるが、日本は平均寿命・健康寿命ともに世界一である。長生きな上に「健康」なのだ。

【参考】日本の健康寿命は世界一 ~WHOが発表~(全国保険医団体連合会)

健康寿命が短くて悩んでいる国(悩んでいるかわからないが)からしたら、「日本人は一体何を騒いでいるんだ?」という感じかもしれない。

思いわずらうことなく愉しく生きよ

「思いわずらうことなく愉しく生きよ」のドラマのワンシーン画像引用元:江國香織「思いわずらうことなく愉しく生きよ」ドラマ原作(レシピブログ)

見出しは、江國香織のベストセラー小説のタイトルである(Wikipedia)。NHKでドラマ化もしたヒット作なので、知っている人もいるかと思う。

主人公の三姉妹は、父親が残した家訓に、それぞれのやり方で従って生きている。↓

人はみないずれ死ぬのだから、そして、それがいつなのかはわからないのだから、思いわずらうことなく愉しく生きよ
「思いわずらうことなく愉しく生きよ」江國香織(読書日和)

このタイトルは、おそらく聖書・マタイ伝の有名な言葉「だから、明日のことを思い煩うな」から来ている。仏教の禅宗でも、似た言葉で不思善悪(ふしぜんまく)がある。「何が良いか悪いか考えない」という意味だ。

「不自然 不思悪」(ふしぜん ふしあく)と書かれた書道家による書の作品画像引用元:不自然不思悪(日本現代美術工芸・善 ZEN)クリックで拡大

確かに孤独死は改善されるべき「課題」だが、日本人の平均寿命・健康寿命が世界一というのも、また事実なのだ。

  • どこまで完璧な国を目指すのか
  • 孤独死が解決しても、また次の問題を「問題視」するのではないか

ということも、合わせて考えるといいかもしれない。そして、個人単位でいえば「孤独死を恐れない」ことも、案外効果的な「孤独死対策」になるかもしれない。

(もちろん、健康管理を適度にしっかりした上での考え方だが)

【参考】孤独死の対策(当サイトの別記事)

参考資料

定義に関するもの

定義がないため、自治体が調査をしにくい実情

孤独死の定義は極めて重要だ。なぜなら、実態を調査していない都府県(北海道はしている)で「国に定義がないから」という回答があったためである。

一方、調査をしていない都府県からは「国に定義がないことに沿っている」(神奈川県)、「孤立状態をどうとらえるかが難しい」(秋田県)、「正確に把握する方法がない」(大阪府)などの意見が挙がった。
孤独死、推計2.7万人 つかめぬ実態「国に定義なく」(朝日新聞デジタル)

神奈川県はそのまま「国に定義がないこと」を理由としている。秋田県・大阪府の回答も「定義がないので調査が難しい」という意味である。

これらの府県のスタンスは間違っていない。勝手に孤独死に分類するのは、故人への失礼に当たる恐れもあるためだ。また、都道府県によって定義が異なれば「どこどこは孤独死が少ない・多い」ということになりかねない。

昨今は、老後の住み替えに伴うビジネスも盛んになっている。「○○県は孤独死が少ない」という報道がなされると、そのデータがビジネスの分野で独り歩きしてしまう恐れがある。

こうした可能性も考慮すると「国が定義を統一しないうちは、安易に統計をとれない」とする自治体の姿勢も正しいのである(だからこそ、官民双方で定義の確定を進めなければならない)。

「孤独死の定義」だけで論文も書かれている

上田智子教授の顔写真画像引用元:教員紹介 – 健康福祉学科・上田智子(名古屋経営短期大学)

名古屋経営短期大学健康福祉学科の上田智子教授(写真)ら9名の研究者の方々が「孤独死・孤立死の定義」だけで、一本の論文を書かれている。下記のものだ。

【参考】孤独死(孤立死)の定義と関連する要因の検証及び思想的考究と今後の課題| 名古屋産業大学・名古屋経営短期大学リポジトリ(リンク

論文は『名古屋経営短期大学紀要』 の第51号に掲載されている。こうした事実からも「孤独死の定義」の重要性がわかる。

定義が進まない理由(難しさ)

孤独死の定義が進まない理由を、Wikipediaは以下のように説明している。

孤独死は明確に定義され難い部分を含むため、以下のようなケースでは特に判別が難しい。
「定義の難しさ」の段落(Wikipedia・孤独死)

  • 突然死
  • 自殺
  • 類似するケース(老老介護による餓死など)

当記事では、突然死・自殺は除外した(定義の解説)。「老老介護による餓死」については、含むスタンスで執筆している(餓死する時点で、社会的に孤立していたというべきなので)。

各所の定義

内閣府の定義

誰にも看取られることなく息を引き取り、その後、相当期間放置されるような「孤立死(孤独死)」
平静26年版高齢社会白書 第1章・第2節6「高齢者の生活環境」(内閣府)

「これは定義なのか?」と思う人もいるだろう。上の文章を「内閣府の定義」とした論文がこちらだ。↓

孤立死についての確固たる定義はないが、内閣府の高齢社会白書には「誰にも看取られることなく息を引き取り、その後、相当期間放置されるような悲惨な孤立死(孤独死)」と表現されている。
高齢者孤立死の現状と背景についての検討(日本交通科学学会誌)

厚生労働省

厚労省は定義をしていない。これは「しない方が良い」と考えているためだ。

理由は「定義することによって、その定義から外れる人がカバーされなくなる」恐れがあるためだ。つまり、自治体職員の裁量で「助けるべき人」を「助けられなくなってしまう」恐れがあるわけだ。

この厚労省の考えは、以下の答弁でわかる。平成19年2月20日、第166回国会の、御園政府参考人(厚生労働省審議官)の言葉だ。

定義をしたことによって、我々がカバーしたい対象の範囲が逆に限定されてしまうのではないかというようなことも懸念しておりまして、そういう意味で、私ども、現段階におきましては定義ということはしておりません。
【PDF】第1回推進検討会の宿題について(厚生労働省)

(宿題というタイトルがかわいいと思ったのは筆者だけだろうか)

暫定の定義はある

一応、暫定の定義はある。↓

社会から「孤立」した結果、死後、長期間放置されるような「孤立死」
高齢者等が一人でも安心して暮らせるコミュニティづくり推進会議(厚生労働省)

助けが必要なあらゆる人に適用できるよう「広い定義」にしていることがわかるだろう。

※「長期間放置」の部分については、当記事の定義「日数は考慮しない」と、やや見方が異なるかもしれない。

UR都市機構

UR都市機構の定義は、事故物件の認定に直結する。そのため、特に不動産の分野で重要な情報だ。URの定義は下のものである。

孤独死とは、「病死又は変死」事故の一態様で、死亡時に単身居住している賃借人が、誰にも看取られることなく、賃貸住宅内で死亡した事故をいい、自殺又は他殺を除く。
【PDF】孤独死に関する対策等について(UR都市機構)

完全に「不動産用」の定義なので「単身居住・賃借人・賃貸住宅内」などの用語が出てくる。

【参考】孤独死の原状回復(当サイトの別記事)

東京都新宿区

区が孤独死対策を講ずべき対象者を「二週間毎程度に見守る者がいない、独居又は高齢者のみ世帯の高齢者」としました。
【PDF】高齢者の孤独死対策について(新宿区)

東京新聞

東京新聞の定義は、以下の論文の中で紹介されている。

東京新聞や新井康友(新井,2010)らは「一人暮らしをしていて、誰にも看取られずに自宅で亡くなった場合」と定義しており(中略)2006年5月7日の東京新聞朝刊
孤独死報道の歴史(立命館大学大学院 先端総合学術研究科)

大辞林

この定義は直接原文を確認できなかった。NPO法人「Wall Less Japan」が、以下のように紹介している。

「だれにもみとられずに、死亡すること。特に、一人暮らしの高齢者が自室内で死亡し、死後しばらくしてから遺体が発見されるような場合についていう。」(三省堂 スーパー大辞林 3.0より)
孤独死について(NPO法人・Wall Less Japan)

東京都監察医務院の定義

監察医務院では「孤独死」を「異状死の内、自宅で亡くなられた一人暮らしの人」と定義しています。
【PDF】東京23区における孤独死の実態(東京都監察医務院)P.2「緒言」より

日本少額短期保険協会の定義

本分析資料においては、東京監察医務院の定義から「異常死」のみを除外し、「自宅内で死亡した事実が死後判明に至った1人暮らしの人」と定義付けする。なお、死亡から発見までの期間は問いません。
孤独死の現状レポートの概要(日本少額短期保険協会)

ニッセイ基礎研究所

これは直接の定義ではない。「各自治体の定義に、どんな要素が含まれているか」の調査である(ある意味、他の定義より役立つ)。

「特に定義は設けていない」が約 85%。定められている定義の要素は「独居」12%、「親類等とのつきあいがない」5.3%、「地域との関わりが希薄」4.8%、「発見までに日数を要した」2.3%があるが、死後の経過期間を定めている自治体はわずか 10自治体のみである。
セルフ・ネグレクトと孤立死に関する実態把握と地域支援のあり方に関する調査研究報告書(ニッセイ基礎研究所)

表にまとめると下のようになる。

定義の要素 採用自治体の割合
独居 12%
親類等との付き合いがない 5.3%
地域との関わりが希薄 4.8%
発見までに日数を要した 2.3%

すべて数字が少ないようだが「定義を定めている自治体は15%」という点が重要だ。つまり、15点満点(15%が最高)と思ってみてほしい。すると「独居…12%」が、かなり高い確率であるとわかるだろう。事実上の80%くらいだ。

Wikipediaの定義

孤独死(こどくし)とは主に一人暮らしの人が誰にも看取られることなく、当人の住居内などで生活中の突発的な疾病などによって死亡することを指す。
孤独死(Wikipedia)

論文等を参照させていただいた、大学関係者の方々

漫画「天才柳沢教授の生活」の表紙画像引用元:天才 柳沢教授の生活(これも学習マンガだ!)※日本財団・キハラ・Rainbow Bird運営(画像はクリックで拡大)

序盤で孤独死について熱く語っていて、ふと筆者の大学時代を思い出した。課題の提出に追われているときに「○○の解決が急務である」とか熱く書かれていても「いや、関係ないし」と思ったものだ。

実際、私たちはほとんどの社会問題に関わることができないし、関わる必要もない。目の前の仕事を大事にするべきだ(特に健康管理を)。

だから「孤独死など他人事」でもいいのだが、大学時代を思い出し「先生たちは外で頑張っていたんだな」と思った(中でも頑張っていたのだが)。

どの分野でも、大学の先生や研究員の方のお仕事は、学生には「イマイチすごさが伝わらない」ものだ。「あんなマニアックなことして、何の意味があるの?」と思っている学生さんも少なくないだろう。

筆者も昔はそう思っていたが、今回孤独死について深く調べながら、あらためて大学関係者の方々の研究の価値を感じた。それが、この記事を読んでくださる学生さんに、少しでも伝わったら良いと思った。

そのため、当記事で論文などを参照させていただいた、大学の教授・研究員の方々を一覧で紹介させていただく(リンク先は参照部分、順番は記事中で紹介させていただいた順)。

別に学生さんでなくても良いのだが「大学の研究には価値があるんだな」と、少しでも感じていただけたら幸いである。

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