相続放棄するなら遺品整理はNG!賃貸の連帯保証人だとどうなる?

故人が借金を背負っていた場合、遺産を相続すると「借金も相続」してしまいます。それを避けるのが「相続放棄」です。遺産をもらえない代わりに、借金を引き継ぐこともありません。

この相続放棄ですが、故人のお部屋で遺品整理が必要だった場合、下記のようなことを疑問に思うのではないでしょうか。

  • 放棄が確定する前に遺品整理をしてもいいのか
  • 遺品整理をしないで相続放棄をしたら、遺品整理は誰がするのか
  • 賃貸の連帯保証人だった場合、相続放棄で責任はなくなるのか

この記事では、上記のような疑問も含め、相続放棄と遺品整理について知っておくべきポイントをまとめていきます。遺品整理が必要な状態で相続放棄を検討している方にとって、きっと参考になるでしょう。

相続放棄の前に遺品整理をしてはいけない

バツマークを掲げる女性
まず結論を書くと、相続放棄が確定する前に遺品整理をしてはいけません。その理由と「どのような内容ならOKなのか」を説明していきます。

相続を承認したとみなされ、放棄できなくなる

相続放棄は、一度でも相続を承認するとできなくなります。そして、遺品整理をすると「相続を承認した」と見なされる可能性があるのです。

このため、確実に相続放棄をしたいのであれば、放棄が完全に認められるまで、遺品整理はしないことをおすすめします。

手紙・写真などをもらうのはOK

故人がやり取りした手紙や、保管していた写真などをもらうのは問題ないとされています。これらの形見の品には経済的な価値がないためです。

また、手紙や写真以外でも「確実に経済的価値がない」「他の物を触っていない」と証明できる状況であれば、その遺品のみ整理することは問題ないとされます。

放棄完了まで一切触らないのが確実

上の段落では「相続放棄の前に遺品整理をしてもいい条件」を書きました。しかし、たとえこの条件に該当するとあなたが感じても、相続放棄が完了するまでは、一切遺品には手を触れない方がいいでしょう。

どうしても遺品整理をしたいのであれば、後ほど詳しく説明する「相続財産管理人」の選任が必要です。この管理人の立ち会いの元で作業をするなら、相続放棄の前に遺品整理をしてもかまいません。

遺品整理の費用は、相続放棄すると誰が払う?

札束のやり取り
相続放棄をするのはいいものの、遺品整理にかかる費用は誰が支払うのか―。という点を疑問に思う方も多いでしょう。ここでは、この点を詳しく解説します。

最初の予納金20~100万円は必ず払う

相続放棄をするだけでは、遺品整理の義務から逃れられません。この点は後ほど「民法940条の管理義務がある」という段落で解説します。

上のようなルールはあるものの「どうしても相続を放棄したいし、遺品整理もしたくない」ということもあるでしょう。その場合は「相続財産管理人」を選任すれば、その人に遺品整理を任せ、相続を放棄できます。

しかし、この選任にはコストがかかります。また、実際に作業する管理人の人件費や、もろもろの実費も必要です。

これらのコストを税金から出すわけにはいかないため、選任を依頼した相続人たちが「予納金」として支払います。この金額はケースによって異なりますが、大体20万円~100万円が目安です。

遺品整理の費用が莫大だった場合は、後日の請求も

故人の家がゴミ屋敷だった場合など「遺品整理の費用が予納金では足りない」ということもあり得ます。このような場合、不足分の実費を後日請求される可能性もあります。

管理人を裁判所が指名している以上、この支払いは税金と同じく「避けられないもの」です。故人が亡くなった現場の状況が酷いケースなどは、あらかじめこうした「後日の出費」も想定しておきましょう。

現金化できる遺品が多ければ、お金が戻ってくることも

上の段落のケースとは逆に「お金が戻って来る」ということもあります。これは「価値のある遺品」が多かったケースです。

相続財産管理人は、換金できる遺産は極力換金していきます。それで遺品整理の費用を超える「利益」が出たら、それは相続人に返還してもらえるのです。

このため、相続放棄をしたら「予納金を必ず失う」とは限りません。たとえば100万円の予納金を支払い、20万円が戻ってきたら「失うお金は80万円のみ」となります。

もっとも、相続放棄をしたくなるような債務を背負っていた故人の場合、価値のある遺産は少ないものです。上記のようにお金が戻ってくるパターンは、期待し過ぎない方がいいでしょう。

相続放棄前の遺品整理は弁護士に相談が必要?

弁護士の男性
「相続放棄の前にどうしても遺品整理をしたい」ということもあるでしょう。それが許されるかどうか、最終的に決めるのは裁判所です。

しかし、裁判所に尋ねて回答をもらうのは当然難しいもの。そこで裁判所に代わる相談先となるのが法律事務所(弁護士)です。

ここでは、どのようなケースで弁護士に相談すべきか、相続放棄と弁護士はどう関わるのかを説明していきます。

どうしても遺品整理をしたいなら相談する方が安心

結論を書くと「遺品整理をするのであれば、どんなケースでも弁護士に相談する方が安心」といえます。「このケースなら大丈夫」という素人判断は危険ということです。

よほど複雑なケースでない限り、弁護士なら「どこまで触っていいか」という大体の結論はすぐに出せるものです。詳細にヒアリングしても、30分~1時間もあれば十分でしょう。多くの弁護士は初回の30分~1時間程度は無料相談に応じているため、その時間内でアドバイスをもらうことは十分可能です。

管理人選任の申立は司法書士に依頼する

相続財産管理人を立てるには、家庭裁判所に「選任の申し立て」をする必要があります。この作業には多くの書類が必要となり、一般の方が自力でこなすのは難しいもの。

このため専門家に依頼するのですが、この業務については弁護士より司法書士が適しています。この業務では弁護士と司法書士で「権限の差」がないためです。

権限が同じなら、リーズナブルな料金で対応してくれる司法書士に依頼すべきといえます。弁護士が司法書士と同程度の料金で対応してくれる可能性もゼロではありませんが、一般的にはほとんど見られないケースです。

このため、選任の手続きを専門家に依頼するなら、「相手は弁護士でなく司法書士」と考えてください。

裁判所が弁護士を「相続財産管理人」に選ぶこともある

相続放棄や遺品整理と弁護士が一番深く関わるのは「弁護士が相続財産管理人」に選べるときです。通常の弁護士ならアドバイスや裁判の支援以上の関わりはありません。

しかし、相続財産管理人に選定されると「その遺産を管理するほぼすべての権限」を持つわけです。裁判所が指名したわけですから「国の代理人」といえます。

こうなると、あなたの相続放棄・遺品整理との関わりは非常に強くなるでしょう。これが「もっとも弁護士が関与するケース」といえます。

なお、相続財産管理人は弁護士以外の人でもなれます。司法書士などの専門家はもちろん、何の資格もない「一般人」でもなれるものです。管理人の資格について、裁判所は下のように説明しています。

資格は必要ありませんが,被相続人との関係や利害関係の有無などを考慮して,相続財産を管理するのに最も適任と認められる人を選びます。弁護士,司法書士等の専門職が選ばれることもあります。

引用:相続財産管理人の選任(裁判所)
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_15/

上記のようなルールであるため、必ずしも弁護士が管理人になるとは限りません。しかし、「相続財産管理人がどのように選ばれるのか」という点は、相続放棄をする前に理解しておくといいでしょう。

相続放棄しても連帯保証人の義務は残る

書類にサインする姿
特に故人が賃貸の部屋に住んでいた場合、「あなたが連帯保証人になっていた」ということもあるでしょう。この場合「相続放棄をしたら連帯保証人の責任は消えるのか」という点も気になるかと思います。

結論を書くと、見出しの通り「連帯保証人の義務は残る」ものです。ここでは詳しいルールを説明していきます。

連帯保証人は「本人とほぼ同じ義務」がある

これは借金の返済などでよく知られていることですが、連帯保証人は「本人とほぼ同じ義務」を持っています。連帯とは「イコール」という意味なのです。連帯保証人とは本人とイコールの(同等の)義務を持つ保証人という意味なんですね。

例えば、故人が賃貸住宅に住んでいたとします。そして、あなたがその賃貸契約の連帯保証人だったとしましょう。

この場合、孤独死による修繕費用などは、本人に代わってあなたが支払う義務を持ちます。たとえ相続放棄をし、後で説明する「相続財産管理人の選任」をしたとしても、義務は消えません。

これで消えるのは「相続人の義務」だけだからです。「連帯保証人の義務」はまったく別物であり、相続放棄や管理人の選任をしても消えません。

借金の支払い義務なども消えない

上の段落では「賃貸契約」の例を出しました。これ以外でも、すべての連帯保証人としての義務が「相続放棄をしても消えないもの」となります。

たとえば、故人が借金をしていたとします。そして、あなたが連帯保証人だったとしましょう。この場合も、故人が生きていた場合と同様に、あなたが支払い義務を持ちます。

同じように、あなたが何かについて故人の連帯保証人になっていたら、その件についてすべて連帯保証人としての義務が生じます。一方「連帯保証人になっていなかった件」については、関係ありません。

  • 賃貸契約…連帯保証人だった
  • 借金…連帯保証人ではなかった

上の例の場合、賃貸契約の方だけ責任を負えばいいということです。

相続放棄をしたら、賃貸アパートの遺品整理はどうなる?

賃貸アパート
上の段落では、賃貸の「連帯保証人になっていた場合」について説明してきました。次に気になるのは「連帯保証人でなかったら、相続人の責任はどうなるのか」ということでしょう。この段落では、この点を説明します。

民法940条の管理義務がある(保証人でなくても)

結論を書くと、賃貸住宅や土地のように「誰かが管理しなければいけないもの」については、管理する義務があります。相続放棄をしても、管理人が決まるまでは相続人たちが管理しなければいけないのです。

「保証人ではなかったから関係ない」ということはありません。保証人であろうとなかろうと、「相続人」である限り、民法940条の管理義務からは逃れられません。

(相続の放棄をした者による管理)

第940条
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

引用:Wikibooks「民法第940条」
https://ja.wikibooks.org/wiki/民法第940条

上のような条文ですが「相続放棄をしても、管理人が決まるまでは自分の財産のように管理しなさい」と書かれています。「自分の財産のように」というのは「本人と同じ義務を持つ」ということです。連帯保証人と似ていますね。

相続財産管理人を選任すれば義務がなくなる

民法940条のルールは、裏を返せば「管理人さえ決まれば管理義務はなくなる」ということ。このため、管理義務を放棄したい場合は、相続財産管理人を決めればいいわけです。しかし、相続財産管理人は勝手に指名できるわけではありません。

選任は家裁に申し立て、予納金を納める

相続財産管理人の選任は、家庭裁判所が行います。そのため、まずはこの申し立てを家裁にすることが必要です。

それと同時に「予納金」として20~100万円を納めます。管理人の選定だけでなく、管理人が実際に仕事をするためにも費用が必要なため、この予納金を充当するわけです。

孤独死は、相続放棄前の遺品整理が必要になる

廃墟のようなアパート
ここまで書いてきた通り、「相続放棄が完了するまでは遺品整理をしない」というのが原則です。しかし、孤独死の場合は例外となります。ここでは「故人が孤独死した場合の相続放棄と遺品整理」について解説します。

孤独死でも管理人選任で義務はなくなるが…

相続放棄をして管理人を決めれば、管理義務はなくなります。これは孤独死でも同じです。

しかし、孤独死独特のケースとして「管理人の選任中でも、現場の遺品整理や特殊清掃をせざるを得ない」というものがあります。

悪臭など早期の対応が必要な場合も

たとえば一人暮らしの高齢者が孤独死をした場合、発見されるまでに時間がかかることがしばしばあります。そして、特に夏場などは遺体が腐乱し、強烈な悪臭を放っているケースも多いものです。

また、遺体はすぐに発見されても「ゴミ屋敷状態のため、近隣から苦情が来ている」ということもあります。悪臭にしても虫の大量発生にしても、この場合はすぐに遺品整理をすることが必要です。

(このようなケースは、故人の生前から苦情が来ていた場合もあります。そのような場合は、故人が亡くなった直後から相続人が対応することが必要です)

このように、故人が孤独死したケースでは「相続放棄をするにしても、問答無用ですぐに遺品整理・特殊清掃が必要になるパターンがある」と理解してください。

まとめ

オペレーターの女性
相続放棄と遺品整理の関係について、知っておくべきポイントやルールをまとめてきました。「遺品整理をしたせいで相続放棄ができなくなることがある」という問題は、知っていれば大したことではありません。「放棄が完了するまで、何にも手を付けない」というだけです。

しかし、知らなかったがために莫大な借金まで背負ってしまうというのは、非常に怖いことです。また、相続人の方々は「借金などないから遺品整理をしても大丈夫」と思っても、実は故人が「隠れ借金」を背負っていた恐れもあるでしょう。

こうして考えると、遺品整理を始める前に弁護士などの信頼できる専門家に一度相談するのがおすすめです。弊社は弁護士を含む全国800以上の士業とのネットワークを持っているため、弁護士だけでなく司法書士など、他分野の専門家も多数ご紹介できます。相続財産管理人を選定するときには司法書士に依頼することが多いので、この点でも弊社にご依頼いただくことは有利だといえます。

相続放棄と遺品整理の双方を検討されている方は、ぜひお気軽に弊社にご相談ください。

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