遺品を勝手に処分された時の3つの対策(自分が無断で捨てるのもNG)

遺品の中でも特に価値のあるものは、親族や違法業者などによって「勝手に処分」されてしまうことがあります。逆に、他の兄弟姉妹や親族などに連絡がつかないとき、あなた自身が「勝手に処分してもいいだろうか」と考えることもあるでしょう。この2点について結論を書くと、下の通りです。

  • 勝手に処分されても、賠償請求などで対抗できることが多い
  • 自分が勝手に処分するのは厳禁(遺産分割などの手順を踏む)

この記事では上記の2点を含めて、遺品整理の正しい手順と、勝手に処分された場合の対策を解説していきます。冒頭のようなケースで迷われているどちらの立場の方にも、参考にしていただけるでしょう。

相続した遺品を勝手に処分されたらどうすればいい?3つの対策

作業着の女性

あなたが相続した遺品であれば、それは「あなたの所有物」です。そのため、それを勝手に処分したということは「あなたに対する犯罪」となります。

このため、あなたは民事と刑事の両方で相手を訴えることができる可能性があります。以下、その具体的な方策を解説していきます。

遺品に金銭的価値があるなら、損害賠償を請求できる

カメラ

多くの場合、遺品を勝手に処分されて困るのは「金銭的価値があった場合」でしょう。その価値に目をつけた親族などが勝手に売却し、勝手に激化してしまった、というようなケースです。

こうしたケースでは、その金額相当分の損害賠償を請求できます。「あなたの物を勝手に売った」のだから、これは当然です。また、裁判にかかった費用なども併せて請求できます。

遺品が精神的に重要なものなら、慰謝料を請求できる

遺品に金銭的な価値がなくても、賠償を請求できる場合があります。このときは「精神的な苦痛」に該当するので、損害賠償でなく「慰謝料」になります。

「慰謝料=離婚」というイメージがあるかもしれませんが、実は慰謝料は「あらゆる場面で使える」ものです。「精神的な苦痛に対する賠償」は、すべて慰謝料なのです。辞書でも下記のように定義・説明されています。

精神的被害に対する損害賠償をいう。民法は,不法行為について精神的損害の賠償請求を認め (710条) ,生命侵害の場合には,被害者の父,母,配偶者,子からの賠償請求を認める (711条) 。その賠償額は,厳密にいえば,財産的な損害ではないから算定不可能であるが,両当事者の地位,加害行為の悪性などを総合的に考慮して,裁判官が決定する。
コトバンク「慰謝料」

どんな遺品なら慰謝料を請求できるか?

これはケースバイケースで、基本的には「難しい」と思ってください。一応「金銭的な価値がないものでも、処分した相手に対してアクションを起こせる」という説明のために書いたものです。

離婚などの精神的苦痛はある程度の「相場」があります。しかし、「勝手に処分された遺品」というのは、相場がありません。金銭的な価値がある遺品なら相場がありますが、精神面での相場は出しにくいのです。

具体的な遺品の例

思い出の品

たとえば、あなたが高校時代に国体で上位入賞し、その賞状を親御さんが持っていたとします。その競技を教えてくれたのは親御さんです。いわば「親子の努力の結晶」です。

それを親族に勝手に処分されたとしましょう。その場合、少額の慰謝料を認められる可能性があります。しかし、それがいくらになるかは完全にケースバイケースです。

少なくとも「大金になる」ということは、よほど特殊なケースでなければありません。大抵は「勝手に処分したことに対する、精神的な報復をする」程度にとどまるでしょう。

(実際、裁判所から呼び出しの手紙が来て、それを郵便局員の方から直接受け取るだけでも、相当なダメージになりますから)

民事でなく刑事で訴えるなら、器物損壊罪を適用できる

処分の方法が売却ではなく「廃棄」だった場合、その遺品が勝手に「壊された」ことになります(処分場で焼却・粉砕されるため)。

このため、こうしたケースは刑事事件の「器物損壊罪」で訴えることもできます。もちろん、民事の損害賠償も並行して請求できます。

遺品整理業者が勝手に処分したら?3つの対応策

遺品を勝手に処分したのが、親族・家族ではなく「業者」というケースもあるでしょう。そのような場合はどうすべきか、主な3つの対処法を解説していきます。

ミスなら「業務上過失」で訴えられる

裁判

勝手に処分したといっても「故意ではなく、ミスだった」と業者が主張する可能性もあります。実際、本当にそうだったのかもしれません。

しかし、それでも業者は「プロ」です。このようなプロの過失については「業務上過失」の罪に問うことができます(だからこそ、お金をもらえるわけです)。

業務上過失は、物損に対してもある?

業務上過失というと、ニュースでよく見る「業務上過失致死」や「業務上過失傷害」という、死亡や負傷のイメージが強いでしょう。しかし、このような人損に限らず、遺品という「物損」でも適応されます。

これは下のような辞書の説明でもわかります。

一定の業務に従事する者が,その業務上必要な注意を怠ること。行為者の具体的な注意能力は度外視され,もっぱら業務上要求される客観的注意義務により判断。業務とは継続して従事する活動であって,人の生命身体に対する危険を含むものとされる。一般の過失よりも刑を加重。
コトバンク「業務上過失」

「業務上過失罪」だけだったら、死亡や負傷でなくても該当するのです。あまりこのような事件はニュースにならないため知られていませんが、「物損も対象」と理解してください。

売却された場合、2年以内なら返還請求が可能

アクセサリー

宝石や腕時計など「価値の高い遺品を勝手に売却された」というケースもあるでしょう。この場合、売却されたときから2年以内であれば返還請求が可能です。

これは民法193条に規定されています。請求先は、その売却された店舗です。ジュエリーショップ・質屋・リサイクルショップなどに請求します。

現物があれば、無償で返品してもらえる

まだその店舗に残っていればですが、その宝石・腕時計などの現物をそのまま返品してもらえます。料金を払う必要はありません。

もちろん、店舗の側は打撃を受けます。店舗はこの損害を「勝手に遺品を売却した業者」に対して請求するわけです。

店舗にすでに在庫がない場合は?

これは原則、打つ手がありません。リサイクルショップや質屋では、商品を買うお客さんの個人情報などは聞き出さないためです(買い取るときのみ聞き出します)。

1人までは追跡できても、そこからさらにどこかに売却されたりプレゼントされたりしていれば、追跡は不可能でしょう。この場合は、遺品を売却した業者に対して損害賠償を請求することになります。

遺品整理協会・遺品整理士認定協会などに通報する

これは賠償請求と併せて行う対策ですが、下のような協会にその業者を通報しましょう。

  • 遺品整理協会(その業者が所属している場合)
  • 遺品整理士認定協会(その業者に遺品整理士がいる場合)

通報するのは、その協会や他の利用者のためでもあります。悪質な業者や遺品整理士の登録を早めに抹消することで、協会や資格の信頼性も保たれるためです。

ただ、当然ながら業者が「ミスで処分してしまった」ということもあるため、事情を聞くまでは通報するべきではありません。謝罪がないなど、明らかに対応が悪質な場合に、初めて通報するようにしてください。

不動産を勝手に処分されたら?3つの対処法を解説

不動産

勝手に処分された遺品が「不動産」ということも、稀ではありますが起こりえます。ここでは、そのような場合の対応方法を3つ解説していきます。

売却された…「所有権移転登記抹消」の手続きをする

所有権

当然ながら、自分に所有権がない不動産を売ることはできません。これは手続きの段階で、通常は下記のうちの誰かが気づくものです。

  • 買い手
  • 法務局担当者
  • 司法書士
  • 不動産会社

しかし、稀に高度な手口によって名義を偽る人物もいます。東証1部上場の誰もが知る不動産会社でも「地面師」に数十億円を騙し取られた事件があるほどです。「本物のプロ」にとっては、一般人を騙すことはそれほど難しくないでしょう。

後から「無効化」の手続きをすればOK

手続き

上の段落で説明した通り「勝手に売却される」恐れはあります。しかし、気づいた後でそれを無効化することはできます。

不動産の売買は「所有権の移転登記」をもって完了します。これを取り消す「所有権移転登記抹消」の手続きをすればいいのです。

もちろん、この手続きが勝手になされたこと、本来の所有者があなたであること、などを証明する必要があります。遺品ということは「相続不動産」であるため、相続の権利があることを証明することが必要です。

このように手間はかかるものの、勝手に売却されても不動産を取り戻すことはできます。ただ、問題は「土地に建っていた住宅などを壊された」というケースです。

取り壊しされた…「建造物等損害罪」で訴訟を起こせる

解体

売却された場合は、その手続きを無効にするだけで、権利は元に戻ります。しかし、建物を取り壊されてしまった場合は、もう建物が戻ることはありません(同じものをもう一度建てるというのは、訴えるあなたの側も望んでいないでしょう)。

そのため、このような場合は「建造物等損害罪」で、裁判を起こすことになります。もちろん、裁判の前に和解する選択肢もありますが、和解・調停が成立しなければ、裁判で決着となります。

なお、取り壊し部分が「ウッドデッキだけ」など、ごく一部の場合は「器物損壊罪」になることもあります。どちらにしても、こうした刑事事件の範疇で訴えることになります(民事でなく)。

共有持分を勝手に売られた…売られた範囲による

不動産が他の相続人との共有持分(共有名義)ということもあるでしょう。この場合、勝手に売られたといっても、下の2通りのパターンがあります。

  • 「あなたの持分まで」売られた
  • 「売った人間の持分だけ」売られた

結論をいうと、前者なら取り戻すことができます。後者については、基本的に手を出すことができません(売却は有効です)。

「その人の持分」だったら、自由に売っていい

家とお金

共有持分は、一応「共有」という文字が付いています。しかし、その持分それぞれは「個別の権利」であり、それをどう扱おうが「個々人の自由」なのです。

そのため、共有者の1人が勝手にその人の持ち分を売っても、他の共有者が止めることはできません。この程度の最低限の権利すら与えられないのでは、共有持分の意味がないためです。

(リフォームなどの工事については自由にできません。工事は「不動産全体に影響を与える」ものなので、全体での一致が必要になります)

遺品を勝手に処分するのはNG!踏むべき3つの手順

一般的に考えても当然のことといえますが、他の家族・親族などに黙って遺品を勝手に処分するのはNGです。では、どのような手順を踏めばいいのか、ここでは3つのステップを解説していきます。

遺産分割協議…相続人で話し合い、書類も作成

遺産分割

遺品を勝手に処分してトラブルになるのは、主に「遺産」としての価値があるものです。形見の品(思い出の品)についても問題になることはありますが、こちらは裁判になるほどではありません(例外もありますが、基本的にはなりません)。

そして、遺産として価値があるものは、本来「遺産分割協議」をするのがルールです。

遺産分割協議で分け合う品目

これは主に下のようなものです。

  • 現金(預貯金)
  • 有価証券(株式・債券など)
  • 不動産(住宅・土地など)
  • 動産(自動車・貴金属など不動産以外の資産)

最後に「動産」と書きましたが、厳密な定義では現金などもすべて「動産」です。ここでは特にわかりやすい動産として、自動車・貴金属などを挙げました。

こうしたものについては、相続の権利がある人(相続人)の間で話し合い、遺産分割協議書を作成するのが本来のルールです。形見の品ならともかく、上記のような「資産」を、こうした手続きなしで処分することは、一般常識では考えられません。

そのため「財産目的でわざとやった」と見なされるのが普通です。こうした遺産分割協議をせずに資産を処分することは、くれぐれもしないようにしましょう。

形見分け…家族・親戚・友人などで分け合う

形見

形見分けは、文字通り「形見の品を分け合う」儀式です。これは遺産分割協議と違い、必ずしも実行する必要はありません。最近では行わない家庭も出てきています。

そもそも、形見分けは儀式として実行しなくても、自然に行われるものです。「お父さんのアルバムからあんたの写真が出てきたよ。あんたにあげる」と、母親が子供に写真を渡すのは、ごくごく自然なやり取りでしょう。その延長にあるのが形見分けという儀式です。

形見分けの詳しいルールや内容については、下の記事を参考にしていただけたらと思います。

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遺品供養・処分…お焚き上げなどの儀式を行う

遺産分割も形見分けも終わったら、残った遺品は「いらない物」となります。しかし、遺品をただ捨てるのは気が引けるでしょう。そのため、お焚き上げなどの「供養」をすることになります。

お焚き上げについては下の記事で詳しく解説しているので、興味がある方はこちらを参考になさってみてください。

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このような供養も終わり、最後に「供養の必要もない、ただの粗大ごみ・不用品」というべきものが残ったら、それらは「普通に処分」をします。しかし、遺品整理業者であれば、こうした品物についても「合同供養なら無料」で行ってくれる会社が存在します。

弊社も合同供養に無料でご対応しておりますので、やむなく処分することになったご遺品についても、安心しておまかせいただければと思います。

まとめ

オペレーターの女性

ここまで書いた通り、遺品を勝手に処分することはNGです。しかし、賃貸住宅の退去期限が迫っている場合など「早急に整理しなければいけない」というケースもあるでしょう。

そのような場合は、ぜひ弊社のような遺品整理業者にご相談ください。賃貸住宅の退去などの目的をしっかり果たしつつ、遺品の処分に関する問題が起きないよう、万全の対処をさせていただきます。

「勝手に処分された」場合にもご相談を

逆に「勝手に処分された」というケースでも、ぜひ弊社にご相談ください。弊社は日本全国800以上の士業ネットワークを持っており、弁護士・司法書士・税理士など、遺産関係の専門家を多数ご紹介できます。

弊社と連携する事務所であるため、いずれの専門家にしても「遺品の処分についても詳しい」のが特徴。通常の専門家では把握できない遺品整理の専門的な内容についても、弊社との連携によってスムーズに解決できる専門家が揃っています。

もちろん、処分されたからでなく「処分されそう」という場合でも、ぜひご相談ください。ご質問やお見積りにはすべて無料でご対応しております。皆様のお力になれますことを、心よりお祈りいたしております。

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