
実家(親の家)の生前整理~3つのポイント~
終活という言葉がすっかり定着した現代ですが、まだすべての高齢者の方が終活に取り組んでいるわけではありません。「うちの親は大丈夫だろうか…」「後で困らないように、今のうちから生前整理を進めておきたい」と思っている方は多いかと思います。
しかし「実家の生前整理といっても、何をすればいいのかわからない」という方も少なくないでしょう。この記事では、そうした疑問を解消するために、実家(親の家)の生前整理のポイントや、必要な理由などを説明していきます。実家の生前整理を考えている方にはきっと参考にしていただけるでしょう。
- 実家(親の家)の生前整理・3つのポイント
- コミュニケーションを最重視する
- 小さなことでいいので早めに始める
- 力仕事・法律的な手続きはプロにまかせる
- 親の家の生前整理はなぜ必要か
- 親の転倒などのリスクを防ぐため
- 親が心身ともに健康に過ごせるようにするため
- 相続や遺品整理をスムーズにするため
- 実家が汚いので片付けたい!掃除のコツは?
- 最初に廊下・階段を片付ける
- ベランダや庭など「屋外」を片付ける
- 自分の部屋・兄弟の部屋から片付ける
- 実家の整理は大変!失敗の3つのパターン
- 掃除すると親が怒る
- どれだけ物を減らしても、親が物を追加する
- 何もせずに親が亡くなり、遺品整理で苦労する
- 『ミニマリスト、親の家を片付ける』の5つの原則
- 考えるよりも、まず捨てる
- 片付けの目標を具体的に決める
- 「モノごと」ではなく「部屋ごと」に片づける
- ホットスポット(地雷)には触らない
- 「美しい」でなく「わかりやすい」を目指す
- まとめ
実家(親の家)の生前整理・3つのポイント
親の家(実家)の生前整理をするときにも、重要なポイントがいくつかあります。ここではその中でも特に重要なポイントを3つ紹介します。
コミュニケーションを最重視する
親の家の生前整理をしようとすると、よく起こるトラブルが「親が怒る」「親との関係が悪化する」というもの。親のために良かれと思ってしたことで、逆に関係が遮断されてしまうこともあるわけです。
「別に遮断していい」「死んだ後に面倒な仕事を残してほしくないだけ」という方もいるかもしれません。もちろん「親子関係はこうあるべき」というルールはないので、それでも問題ないでしょう。しかし、その目的も「親が怒ったら達成できない」ものです。
生前整理という「仕事」のためには、親の協力が不可欠
上の段落のように、親に対して精神的に距離がある場合でも、やはり親とのコミュニケーションは必須です。この場合は、親を「仕事のパートナー」と考えるべきでしょう。
生前整理という「達成しなければいけないタスク」があるわけです。そして、会社などのタスクと同じく「どうしてもこの人の協力が必要」という状況です。
それなら、たとえ親子であろうと、それなりに気を使って「一緒に動ける体制」を整えるべきでしょう。「親子なのに何でそんなに気を使わないといけないのか」と思うかもしれませんが、気を使わなければ目標も達成できません。どちらを選ぶかということです。
気を遣わないと後で面倒なことになる
これは人間関係全般で共通することで、なかなか完璧に実行するのは難しいのですが「事前の気遣い」は大事です。そうしないと「後で厄介なことになる」というのは、多くの方が経験で実感しているのではないかと思います。
「仕事やご近所付き合いで気をつかって、何で親にまで」と思うかもしれません。その気持ちはわかりますが、「親の死後に遺品整理をするよりマシ」と考えてください。

小さなことでいいので早めに始める
これも生前整理に限った話ではありませんが、小さなアクションでいいので「早めに起こす」ことが大切。たとえば生前整理専門の業者に「とりあえず電話をかけてみる」というだけでもOKです。
「いや、何もわからない状態で電話はできない」と思うかもしれません。しかし、業者にとっては大切なお客様ですから、さまざまなことを丁寧に説明するものです(もちろん弊社もさせていただきます)。
まだ何もわからない状態であれば「実家の生前整理をゼロから頼むような場合、何が必要ですかね?」というように質問していただくといいでしょう。それだけでも、実家の生前整理がどのような作業なのか、イメージが掴めるはずです。
力仕事・法律的な手続きはプロにまかせる
どんな仕事でも、プロに任せるとスムーズに運ぶものです。特に実家の生前整理では家具の処分など力仕事も多く、プロに任せないと難しいこともあるでしょう。
特に相続の準備や生前贈与など、法律的な手続きになるとなおさらです。このような業務については、ただ不用品回収や清掃を手がけている生前整理の業者では対応できません。
- 法律関連…弁護士
- 税金関連…税理士
- 書類作成…司法書士
- 不動産系…不動産鑑定士
このように、それぞれの分野の専門家のアドバイスを受ける必要があります。業者に生前整理を依頼するのであれば、業者がこのような士業の専門家と強く連携していることが必要です。
そのため、実家の生前整理をプロに依頼する場合は「士業との連携のレベル」も見て、判断していただくといいでしょう。
もし「出来るだけ業者に頼らず自分で進めたい」という場合は、下の記事を参考にしていただくと良いかと思います。

親の家の生前整理はなぜ必要か
実家(親の家)の生前整理をする前に、そもそも「必要なのか?」と思う人もいるかもしれません。ここでは、実家の生前整理の必要性について説明していきます。
親の転倒などのリスクを防ぐため
まずは親の安全を確保するのが目的。高齢者は若い人、働き盛りの世代の人では想像もできないほどよく転びます。
写真のように車椅子になっている場合、普段の移動では安定しています。しかし、車椅子からベッドや普通の椅子に移動するときなどが危険です。
また、車椅子を使わない子供の側からすると「想像もできないもの」が転倒の原因になることもあります。基本的にこのようなリスクは「物があればあるほど高まる」ので、物を片付けることが重要なのです。
親が心身ともに健康に過ごせるようにするため
仮に「転倒の危険」がなくても、親御さんが「健康に過ごす」ことは大切です。そして、そのためにはやはり実家を綺麗にすることが重要といえます。
部屋が散らかっていると、家中の風通しが悪くなります。すると、カーペットや畳、布団や座布団など、あらゆる場所にダニが生息しやすくなります。
ダニは皮膚疾患や鼻炎、その他のアレルギー症状の原因になります。そして、これらの症状が原因でストレスが溜まる、抵抗力が落ちるなどして、さらに他の病気を併発してしまうこともあるわけです。
このような親御さんの疾病リスクを減らすためにも、実家の生前整理は重要といえます。
相続や遺品整理をスムーズにするため
どんな親御さんでも、当然いつかは亡くなります。亡くなったら相続の手続きや遺品整理をしなければいけません。
そのとき、実家が片付いているのといないのとでは、やりやすさがまったく違います。そもそも、生前整理が完璧にできている家庭では、親御さんが亡くなる前からもう、相続も遺品整理も終わっているようなものです。
そのような状態なら、親御さんの最後の時期の介護も、最後の入院での看病も、ストレスや精神的な負担を最小限にしてこなせるでしょう。また、お通夜やお葬式のときにも、あれこれ心配することなく、純粋に故人の死を悼むことができるはずです。
このように「親御さんとの最後の時間を安らかに過ごす」ためにも、実家の生前整理は早めに済ませておく方がいいといえます。
実家が汚いので片付けたい!掃除のコツは?
「実家(親の家)が汚いので片付けたい!」という人も多いでしょう。その時、実家の掃除のコツを知っていると、よりスムーズに片付けることができます。
ここでは、普通の掃除と違い親の家(実家)を片付けるときのコツを3つ紹介します。
最初に廊下・階段を片付ける
この理由は「親を説得しやすい」ためです。親御さんの脳が昔より衰えてしまったとしても「廊下や階段に物があると危ない」ということくらいはわかるでしょう。
危なくなかったとしても「邪魔」であることは確かです。そのため、下のような理由で説得すれば、廊下と階段くらいは片付けさせてくれるものです。
- 荷物を抱えているときに通れない
- 孫が転ぶから危ない
特に後者は効果的です。多くの親御さんにとって孫はかわいいものなので「孫が転んで危ないから」といえば、大抵説得に応じてくれるでしょう。
その後の片付けをスムーズにするためにも必要
廊下や階段から片付けるのは「その後の片付けのため」でもあります。言うまでもなく「物を持って通るときに、障害物がない方がいい」からです。
そもそも廊下や階段を散らかす親がいるのか?
きれい好きな親御さんに育てられた方なら「そもそも、親の実家で廊下や階段に物が置いてあるのか?」と思うかもしれません。しかし、こうした家庭は多いものです。
実際、筆者の実家では、筆者が子供の頃から25歳くらいまで、廊下と階段が下のような状態でした(一軒家です)。
- 廊下に電話台とFAXつき電話機がある
- 玄関に入ってすぐ、大型の本棚と父親自慢の蔵書がある
- 廊下を進んでいくと、また大型の本棚がある
- まとめ買いしたお米などが積んである
- 階段は、踊り場の隅っこに人形や小さな飾り物が置いてある
階段はともかく、廊下は今振り返るとかなり散らかっていました。このようなケースだと、お米以外は「固定の配置」なので、片付けるのは少々難しいかもしれません。
それでも、お米だけは片付けられます。このように移動でき、親が片付けを了承しやすいものが、廊下・階段には多いはずです。そのため、まず最初のきっかけとして、これらから始めるのがいいでしょう。
(ちなみに、筆者の実家のような「固定のインテリア」になっていて、しかも親が満足しているとなると、変えるのは難しいでしょう。この場合は諦めるしかありません。この「諦める」ことについては、他の段落で説明します)
ベランダや庭など「屋外」を片付ける
この理由は「ご近所の安全のため」という理由で、やはり説得しやすいためです。台風が来れば、ベランダや庭に放置されているものが飛んでいきます。
- それが人や車にぶつかったら危ない
- ご近所の家の窓ガラスなどが割れたら危ない
- 駐車してある車に傷がつくかもしれない
このように説得すれば、危機感を持ってくれる親御さんも多いでしょう。この説得が効果的なのは「ご近所」というキーワードで訴えるからです。
高齢者になるほど「ご近所」を意識することが多い
例外もありますが、基本的には年齢が上がれば上がるほど、「ご近所の人に嫌われる」ということを怖がるようになります。この理由は下のようなものです。
- もう引っ越すことができない
- 災害などで困ったとき、自分の力だけで生き残る自信がない
- 日常の行動範囲が狭くなり、自然とご近所の重要性が増す
どれも少々ネガティブな理由ですが、何にしても高齢になると世界が狭まってしまうのは仕方がないことです。一世を風靡したアスリートなども晩年は脳梗塞やパーキンソン病で倒れ、介護を受けながらリハビリに励んでいる例が多くあります。そのため、親御さんが年を取って弱って、行動範囲が狭くなってしまうことは、悪いことではありません。
何にしても、そのように「ご近所」というキーワードで説得できるのは「片付けたい側」としては有利なこと。まずは「明らかに風で飛んでいくもの」から片付けていき「片付けられること」「綺麗な場所で過ごすこと」に慣れ親しんでもらいましょう。
こうして徐々に片付けモードにシフトしていくのが、親御さんに抵抗されずに実家を生前整理するコツです。
自分の部屋・兄弟の部屋から片付ける
もし実家を出たあと、あなたの部屋や兄弟姉妹の部屋がまだ残っているのであれば、それらの部屋から片付けましょう。家庭の状況にもよりますが、大抵これらの部屋は「自由に片付けやすい」はずです。
特に自分の部屋がまだ「自分の領地」として残されているなら、自由に片付けられるはずです。また、兄弟姉妹の部屋についても事情を説明し「片付けたい」ということを伝えれば、後日本人たちが片付けてくれることもあるでしょう。
見られたり捨てられたりして困る物がなければ「好きにやっておいて」と言われるかもしれません。何にしても、兄弟姉妹も「親の死後に実家を片付けるのは避けたい」と思っているはずなので、こちらの説得はしやすいといえます。
実家の整理は大変!失敗の3つのパターン
実家の生前整理は多くの人にとって大変なもの。中には「試みたものの失敗してしまった」という体験談もあります。それらの体験談をまとめると、親の家の生前整理で失敗するパターンは、主に下のようなものがあります。
- 掃除すると怒る
- どれだけ物を減らしても、親が物を追加する
- 何もせずに親が亡くなり、遺品整理で苦労する
以下、これらの失敗のパターンについて解説していきます。
掃除すると親が怒る
多くの人が実家の整理を大変だと思う一番の理由は、やはりこれでしょう。作業自体は時間と労力をかければどうにでもなります。しかし、当の親御さんが「掃除すると怒る」というのであれば、どうしようもないのです。
なぜ怒るのか
これは「物を捨てる」ということについては、下の2通りに分かれます。
- その物に「価値がある」と思っている
- その物に「価値がない」と気づいている
前者なら怒るのはわかるでしょう。後者については「何で怒るのか?」と思うかもしれません。
自分の「決断力のなさ」を指摘されたことに怒っている
「価値がないとわかっているのに捨てられない」というのは、決断力がないということです。これは親御さんなど高齢者の方だけでなく、若者でもよくあります。
- もうほとんど使わないのはわかっている
- でも、高いお金を出して買ってしまった
- 安く売るのもシャクに触る
このような考え方です。これは心理学で「サンクコスト」といいます。日本語では「埋没費用」といい、「もう回収できないコスト」です。
「売れば回収できる」なら、人はすぐに売るわけです。しかし「売っても回収できない」となると、勇気を出して売る(損を覚悟で売る)という決断をしにくくなります。
これは投資家でもよくあることです。投資をしたことがなくても、イメージできる人が多いでしょう。
親御さんも「本当は捨てるべき」とわかっていながら、サンクコストによって「ぐずぐずしている」わけです。それを子供から指摘されると、プライドを傷つけられてしまう―。これが怒る理由の2つ目です。
どれだけ物を減らしても、親が物を追加する
これもよくあるパターンです。せっかく不用品を処分して綺麗にしたのに、親御さんが何か物を買い込んだりもらったりして、そこに物を溜め込んでしまうというものです。
いわゆる貧乏性のようなもので「スペースが空いているのにもったいない」と感じてしまうわけですね。本当は「空きスペースを常に用意しておく方がいい」のです。その方が、そこに家具などを移動しての大掃除をしやすくなりますから。
しかし、片付けができない人はそのように「スペースを空けておく」という発想がありません。親御さんがそのような方だった場合、あなたがせっかく物を減らしても、そこに新しい物を追加してしまうことがあるでしょう。
まずは言葉を選びながら話し合う
親御さんがこのような状態でも、当然ながら怒ってはいけません。「子供に怒られる」というのはどの家の親御さんにとっても気分のいいものではないので、より意固地になってしまう恐れがあります。
そのため、まずは言葉を選びながら慎重に話し合うようにしましょう。
業者などのプロを交えて話し合うのも効果的
これは親御さんの性格にもよりますが、場合によっては生前整理の業者など「プロ」を交えて話し合っていただくのもいいでしょう。というのは「他人や専門家には弱い」という方は、ある程度存在するからです。
- 子供に言われても聞かないけど、他人なら聞く
- 特に専門家の意見なら聞く
「なぜ?」と思うかもしれませんが、それは「その人の中で、そのような判断をする神経回路(シナプス)ができているから」です。逆に「他人がうちのことに口を出すな」と思う人も当然います。法律的にはこちらの方が正しいでしょう(そのため、行政もなかなかごみ屋敷の片付けをできないのです)。
このように個人差はあるものの、もし親御さんが「他人や専門家には弱い」というタイプだった場合、あえて生前整理の業者を交えて話し合っていただくのもいいかと思います。
(最終的に親御さんの安全や健康な生活を確保するなど、親御さんのためになる結果が出れば、親御さんにとっても良いわけですから)
何もせずに親が亡くなり、遺品整理で苦労する
これは親御さんの「亡き後」の話になります。「生前整理をしないといけない」とわかっていても、なかなか手を付けられないことは多いでしょう。
社会人は毎日の生活だけで忙しいので、それも仕方のないことです。ただ、生前整理をしないまま「汚部屋・ゴミ屋敷」のような状態で親御さんが亡くなってしまうと、その遺品整理の大変さは想像を絶します。
遺品整理なしの「相続だけ」でも大変
そもそも、親御さんが亡くなった後というのは「相続だけ」でも大変なもの。
- 財産の把握
- 遺産分割の話し合い
- 書類の作成
こうした作業をすべてこなすだけでも、相当な時間と労力が必要になるのです。また、亡くなった直後のお通夜・お葬式・初七日などの法事もあります。
そもそも「亡くなる前」から大変
そもそも、親御さんが亡くなるときというのは「その前から大変」なもの。最後の入院の前には、要介護のレベルも重いものになっているでしょう。
そして、入院した後もお見舞いや看病を連日しなければいけません。ご家庭によっては「そのようなことはしない」かもしれませんが、平均的な家庭ではやはりこれらの負担が重いものです。
このように「亡くなる前から大変」だったのに、さらに「亡くなった後もいろいろある」わけです。このような「人生の中でも特に忙しい一年」の中に「相続」という、ほとんど経験したことがない複雑な作業が舞い込みます。
これだけでも、どれだけ大変かわかるでしょう。そこに「汚部屋・ごみ屋敷の遺品整理」まで入ってきたら、どんな方にとっても相当な負担だといえます。
このため、親御さんが実家を片付けられないようであれば、生前整理を早めに進めていかなければいけないのです。

『ミニマリスト、親の家を片付ける』の5つの原則
実家や親の家を片付ける方法を考えていると『ミニマリスト、親の家を片付ける』という書籍に行き当たることも多いでしょう。ミニマリストとして有名な、やまぐちせいこさんの著書です。
この書籍では、親の家を片付けるときの原則として、下の5つのポイントが挙げられています。
【ミニマリスト流 親の家の片づけ5原則】
原則1 捨てるが先、考えるのは後
原則2 片づけの 「終わり」 を具体的に決める
原則3 「モノごと」 ではなく 「部屋ごと」 に片づける
原則4 「ホットスポット」 は触らない
原則5 「美しい部屋」 より 「わかりやすい部屋」をつくる
ミニマリスト、親の家を片づける(Amazon.co.jp)
ここではこの内容を参考にしつつ、5つのポイントに補足をしながらまとめていきます。
考えるよりも、まず捨てる
これは自分の家の片付けだったら重要なことです。「捨てようかどうか」と考える時点で「絶対にないと困るものではない」といえます。
だから、そのような場合は捨ててしまっていいのです。万が一困ることがあったら、それはその時対処すればいい、ということですね(そのようなこともめったにないのですが)。
親の家の生前整理では慎重に
これは言うまでもありませんが、すべての家庭で「まず捨てる」が実行できるわけではありません。親の頑固さや、物を溜め込む度合いは千差万別でしょう。
著者のやまぐちせいこさんの場合は、すでに多数の書籍を出版されている有名な方であり、親御さん(義理の親御さんを含む)を説得しやすかったといえます。どの家でも、同じ状況だったら親御さんを説得するのはたやすいでしょう。
逆にいえば、普通の家でまったく同じようにするのは難しいということです。できれば「考えるより捨てる」が理想ですが、あくまで親御さんの状況をよく観察しながらにしましょう。
片付けの目標を具体的に決める
書籍では「終わりを具体的に決める」と表現されています。よく「出口戦略」という言葉がビジネスや投資で使われますが、それと同じ発想でしょう。
当たり前ですが、何かを永遠に続けることはできません。また「完璧な状態」も存在しません。下の記事の理想の生活を過度に追求するという段落の中でも触れていますが、仏教の三大修行で「掃除地獄」というものがあります。

詳細はリンク先に書いているので割愛しますが、僧侶たちが自ら「地獄」と呼ぶくらい、完璧な掃除をするのは厳しいものなのです。もともと厳しい仏教の修行で、さらに「三大修行」に含まれているわけですから、一般人が実行するのは「無理」といえるでしょう。
完璧がないということは、「必ず中途半端で終わらせなければいけない」ということ。「どのくらい中途半端で終わらせるのか」ということを、最初に決めるわけです。
中途半端というと「目標を達成できなかった」というイメージがあるかもしれませんが、そもそもどんな目標も必ず中途半端なものなんですね。上に書いた通り「完璧な状態」はどこにもないわけですから。
そのため「中途半端な目標を決め、それを完璧に達成する」という、少々矛盾した状態を目指す必要があります。要は「あえて守備範囲を狭くし、その中を完璧にする」ということです。ある意味「置かれた場所で咲きなさい」というベストセラーの言葉を、戦略的に考えたものといえるでしょう。
「モノごと」ではなく「部屋ごと」に片づける
これは、片付けの専門家の間でも賛否両論があるようです。やまぐちさんの考えは下のようなものです。
- 「今日は家中の本を片付ける!」とは考えない
- 「今日はリビングを片付ける!」と考える
これが物ごと、部屋ごとの違いですが「物ごとに片付ける方がいい」と主張する人もいます。理由は「その物を捨てるべきかどうか、同じジャンルの他の物と合わせて見ないとわからない」というものです。
先に物を減らすのが先決
この意見の違いは「物が多いかどうか」だといえます。やまぐちさんの場合、おそらく最初から物が少ないため「同じジャンルの物と合わせて判断する」という必要がないのでしょう。「頭の中に入っている」わけです。
逆に物が多く「所有物の全体像」が見えていない場合、「物ごとに片付ける」という方法も有効だといえます。散らかっている実家では、このパターンの方が多いかもしれません。
専門家の間でも意見が割れている以上、最終的には「ケースバイケースで、自身で判断する」ということになるでしょう。同じ人、同じ実家でも「進捗状況によって変わる」ともいえます。
ホットスポット(地雷)には触らない
これはほとんどすべての家庭で意識すべきことといえます。若い人でも誰でも「地雷」というものがありますが、それが実家の片付けでもあるという発想です。
「うちの場合はない」あるいは「私にはない」と思う人もいるかもしれません。しかし、誰にでも絶対に「地雷」はあります。極端な話、心臓を触られることは誰にとっても「地雷」です。
同様に「ここだけは触るな」と家族に対しても言いたくなるような場所が、誰にでもあります。高齢になると意固地になり「正しいことでも認められない」ため、その地雷の範囲が広がるだけなのです。
誰にでも地雷がある以上、親御さんにそれがあるのも当然といえます。そこには触れないように片付ける、というのがポイントです。
「美しい」でなく「わかりやすい」を目指す
やまぐちさんは「美しい部屋よりわかりやすい部屋を目指す」という言葉で表現されています。これは、実家の生前整理では特に意識すべきポイントでしょう。理由は下記の通りです。
- 高齢の親はそれほど美にはこだわらない
- それよりリバウンドを防ぐのが大切
- そのためには「わかりやすさ」が重要
もちろん、審美眼が衰えていない親御さんも見えるでしょう。しかし、そのような方は最初から家を散らかしません。子供が実家の生前整理を考えるくらいの親御さんになると、やはりある程度審美眼が衰えているものです。
そのため、モデルルームのような美しい部屋を目指す必要はないのです。それより重要なことは「親がリバウンドしてしまい、また部屋が汚くなる」というのを防ぐことだといえます。
日用品のストックを、玄関1カ所にまとめる
「わかりやすい部屋」の具体的な方策として、やまぐちさんは「日用品を玄関の1カ所だけでストックする」ことを提唱されています。これは下のような理由からです。
- ストックの量を把握しやすい
- 足りない物を、出かけるときに思い出しやすい
- 買ってきたあと、すぐにしまいやすい
上の2つの理由で「過不足がないちょうどいい状態」が実現されますし、買ってきたあとの「しまう手間」も省けるわけです。「玄関に収納スペースを作る」必要がありますが、それさえクリアすれば、非常にいい方法だと言えるでしょう。

まとめ
実家(親の家)の生前整理に限らず、どんなことでも「早めに進める」「難しい仕事はプロに任せる」というのが基本です。ご自身でできる範囲の整理なら問題ありませんが、法律的な手続きなどはプロに任せていただくのが一番でしょう。
弊社エコアールでは、実家のお片付けのような「物理的な生前整理」から、相続の準備・生前贈与などの「法律的な生前整理」まで幅広くお受けしております。特に後者については、弁護士・司法書士・税理士・不動産鑑定士など、全国800以上の士業とのネットワークを持っているのが特徴。このネットワークを活かし、お客様にとって最善のプランを提案させていただきます。
生前整理についても通常の片付けについても、ご質問やご相談は何でもお気軽にお寄せください。生前整理に精通したスタッフが、丁寧にわかりやすくお答えさせていただきます。
遺品整理のみらいプロセスの対応エリア
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